東京地裁が判決で大田区の違法を認定 =原告の実質勝訴の結果2006年11月30日
弁護士 藤 岡 毅
[判決言渡し]2006年11月29日午後1時10分、東京地方裁判所712号法廷で判決が言渡されました。 [処分の違法を判決で認定] 判決は、裁判で審理対象となっていた行政処分が身体障害者福祉法の支援費制度に準拠するものだったが裁判の途中で自立支援法が施行されて支援費制度が消滅したという「法改正」を理由に訴えを「却下」するものでした。 しかし、問題は、大田区が移動介護要綱をもとに鈴木敬治さんに下した支給決定が違法か否かの点です。 そして、違法か否かという争点について東京地方裁判所杉原則彦裁判長は、「違法な処分」と判決において断定しました。 すなわち、法改正という原告にはどうにもならない事情で行政訴訟が成り立たなくなったという点はともかく、審理の主眼であった「上限要綱に基づく移動支援費の削減処分が違法か否か」の点について極めて明快に「違法」と断言したものであり、形式的には敗訴ですが、原告鈴木敬治さんの「実質勝訴」といってよい内容です。ただし、障害者が被った不利益に対する救済措置を命じなかったこと等この判決に問題がないわけではなく、検討課題は残りますが、HPでの言及は後日に期します。 [判決の要旨] 裁判所がマスコミ用に配布した判決の要旨は別紙のとおりです。 こちらから判決要旨PDFファイルダウンロード [判決が認定した重要部分] 判決文の中で重要な部分をわかりやすく引用します。 ・支給決定の個別認定の原則(36頁) 「身体障害者福祉法は、障害者の個別の勘案調査結果を基に支給量につき、各障害者ごとに個別に判断することを求めている。」 支給決定は、個々の障害者の個別ニーズに合わせて決められるべきという原則の確認です。 ・移動介護要綱それ自体の違法性の指摘(37頁) 「ところが移動介護要綱6条(2)及び(3)は、余暇活動等社会参加のための外出の支給量を一律に原則として1ヶ月32時間以内として、それを超えることが出来るのは区長が特段の事情があると認めた場合に限るとして、32時間を超える場合は、厳格な判断基準を設けている。 それにより移動介護が激減するような事態は法の趣旨に反するものといわざるを得ない。」 移動介護要綱の構造それ自体に違法性の根源があることの指摘。 ・健常者基準批判(37頁) 「健常者の余暇時間から障害者の外出支給量を一律に1ヶ月32時間という基準を設けることが合理的ということは困難である。」 障害者は健常者に合わせるべきという大田区の姿勢を非難しています。 ・32時間基準の合理性欠如(37頁) 「被告の主張する国勢調査を参照しても、一律に1ヶ月32時間という基準を設けることの合理性を見出すことももた困難といわざるを得ない。」 「本件全証拠を精査してみても、32時間という基準と財政上の制約との間に合理的な関連性を見出すことはできない」=32時間を財政で正当化できない(財政論批判)(38頁) 被告の全ての主張と証拠を精査しても、大田区の定めた32時間基準は不合理であることの断定。 ・移動介護要綱による支給量削減の違法性(38頁)。 「余暇活動等社会参加のための外出に支給量を一律に原則1ヶ月32時間以内とし(6条2号)、それを超えることができるのは区長が特段の事情があると認めた場合に限るとする(6条3号)本件要綱を定め、これに基づいて区が支給量を決定することは、少なくとも必要として支給されていた支給量が激減する障害者にこれを行なう限りにおいては、裁量権の範囲を逸脱し、または濫用したものとして違法となる。」 移動介護要綱を適用して支給量を削減することは違法である。 ・要綱に従った本件各処分の違法性の宣言(39頁) 「本件要綱に従うことによって、原告は支給量が4分の1または3分の1に激減する。 「本件各処分は、身体障害者福祉法の趣旨に反して、その判断の過程において考慮すべき事項を考慮しないこと等により、その内容が社会通念に照らし妥当性を欠くものといわざるを得ないから、行政庁の有する裁量権の範囲を逸脱したものとして違法な処分である。」 移動介護要綱に基づいて、個別事情を考慮しないでなした本件処分は全て違法であることの宣言。 ・自立支援法に基づく処分においてもこの判決の趣旨が及ぶことの確認(43頁) 「法律の改廃の結果、訴えが不適法となった。 しかしながら、原告になされた本件各処分が違法であったことは前記のとおりであるから、今後原告について、障害者自立支援法等に基づく処分をするにあたっては、行政庁において、同法の趣旨及び目的並びに前記の判断の内容を踏まえ、同法の運用を適切に行なうことが期待されるところである。」 [まとめ] 皆様からのご支援の賜物で今回実質勝訴判決を勝ち取ることが出来ました。 改めまして深く感謝申し上げます。 判決当日の午後6時、7時、8時、9時とNHK総合テレビが本件判決の意義と鈴木敬治さんの様子を長時間全国に放送し、この問題について広く理解が広まったものと思います。翌日の各新聞も大きく取りあげています。 この東京地方裁判所判決の認定内容に従って、被告大田区が適切な対応をするものと信じております。 以上
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