『賃金と社会保障』1439(2007年4月上旬号) 社会保障・社会福祉判例 支援費制度において、移動介護量の一律上限を定めた要綱に基づき、要綱制定前は124時間の移動介護量のあった者が32時間あるいは42時間にされたことにつき、身体介護を伴う移動介護に係る居住生活支援費の支援費支給決定処分の取消と支援費支給決定の義務付けなどを求めて争われた事実 鈴木訴訟・東京地裁判決(平成18年11月29日) 平成17年(行ウ)第379号身体障害者居宅生活支援費支給決定通知処分取消等請求事件 判  決 東京都大田区△△丁目○番○号 原告         鈴木 敬治 訴訟代理人弁護士   藤岡  毅 東京都大田区蒲田五丁目13番14号 被告           大田区 代表者兼処分行政庁  大田区長 西野 善雄 指定代理人      河合由起男 岩田  実 松井 克之 池  一彦 主  文 一 本件訴えのうち、処分行政庁が原告に対してした身体障害者居宅生活支援費支給決定のうち原告の支給申請を棄却した部分の各取消しを求める訴えの部分、身体障害者居宅生活支援費支給申請につき居宅支援費の「移動介護・身体介護有」の一か月当たりの支給量を「一二四時間」とする旨の処分の各義務付けを求める訴えの部分、「大田区居宅介護支援費(移動介護)の支給決定に関する要綱」六条(2)及び(3)が違法であることの確認を求める訴えの部分、並びに処分行政庁に対し、原告に身体障害者居宅生活支援費として金七八三万五六一〇円及び内金五六五万八九八〇円に対する平成一七年九月二七日から、内金二一七万六六三〇円に対する同一八年八月二五日から、それぞれ支払済みまで年五分の割合による金員の支払の義務付けを求める訴えの部分をいずれも却下する。 二 原告のその余の請求を棄却する。 三 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第一 請求 一(1) 処分行政庁が原告に対してした平成一六年三月三一日付け身体障害者居宅生活支援費支給決定のうち、居宅支援費の「移動介護・身体介護有」の一か月当たりの支給量「三二時間」を超える部分について原告の支給申請を棄却した部分を取り消す。 (2) 処分行政庁は原告に対し、平成一六年三月三一日付け身体障害者居宅生活支援費支給申請につき、居宅支援費の「移動介護・身体介護有」の一か月当たりの支給量を「一二四時間」とする(ただし、三二時間を下回る部分を除く)旨の処分をせよ。 二(1) 処分行政庁が原告に対してした平成一六年一〇月一日付け身体障害者居宅生活支援費支給決定のうち、居宅支援費の「移動介護・身体介護有」の一か月当たりの支給量「三二時間」を超える部分について原告の支給申請を棄却した部分を取り消す。 (2) 処分行政庁は原告に対し、平成一六年一〇月一日付け身体障害者居宅生活支援費支給申請につき、居宅支援費の「移動介護・身体介護有」の一か月当たりの支給量を「一二四時間」とする(ただし、三二時間を下回る部分を除く)旨の処分をせよ。 三(1) 処分行政庁が原告に対してした平成一六年一二月二八日付け身体障害者居宅生活支援費支給決定のうち、居宅支援費の「移動介護・身体介護有」の一か月当たりの支給量「三二時間」を超える部分について原告の支給申請を棄却した部分を取り消す。 (2) 処分行政庁は原告に対し、平成一六年一二月二八日付け身体障害者居宅生活支援費支給申請につき、居宅支援費の「移動介護・身体介護有」の一か月当たりの支給量を「一二四時間」とする(ただし、三二時間を下回る部分を除く)旨の処分をせよ。 四(1) 処分行政庁が原告に対してした平成一七年四月一日付け身体障害者居宅生活支援費支給決定のうち、居宅支援費の「移動介護・身体介護有」の一か月当たりの支給量「三二時間」を超える部分について原告の支給申請を棄却した部分を取り消す。 (2) 処分行政庁は原告に対し、平成一七年三月三一日付け身体障害者居宅生活支援費支給申請につき、居宅支援費の「移動介護・身体介護有」の一か月当たりの支給量を「一二四時間」とする(ただし、三二時間を下回る部分を除く)旨の処分をせよ。 五(1) 処分行政庁が原告に対してした平成一七年七月一日付け身体障害者居宅生活支援費支給決定のうち、居宅支援費の「移動介護・身体介護有」の一か月当たりの支給量「四二時間」を超える部分について原告の支給申請を棄却した部分を取り消す。 (2) 処分行政庁は原告に対し、平成一七年六月二九日付け身体障害者居宅生活支援費支給申請につき、居宅支援費の「移動介護・身体介護有」の一か月当たりの支給量を「一二四時間」とする(ただし、四二時間を下回る部分を除く)旨の処分をせよ。 六 平成一五年七月一日付け保福障発第五三三号大田区助役決定に係る「大田区居宅介護支援費(移動介護)の支給決定に関する要綱」六条(2)及び(3)が違法であることを確認する。 七(1) 主位的請求(抗告訴訟たる義務付けの訴えとして) 処分行政庁は、原告に対し、身体障害者居宅生活支援費として金七八三万五六一〇円及び内金五六五万八九八〇円に対する平成一七年九月二七日から、内金二一七万六六三〇円に対する同一八年八月二五日から各支払済みまで年五分の割合による金員の支払をせよ。 (2) 予備的請求(国家賠償の訴えとして) 被告は、原告に対し、金七八三万五六一〇円及び内金五六五万八九八〇円に対する平成一七年九月二七日から、内金二一七万六六三〇円に対する同一八年八月二五日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 第二 事案の概要 本件は、原告が、平成一七年法律第一二三号による改正前の身体障害者福祉法(以下「旧身体障害者福祉法」という。)に基づき身体介護を伴う移動介護に係る居宅生活支援費の支給量を一か月当たり一二四時間として申請したにもかかわらず、処分行政庁から「大田区居宅介護支援費(移動介護)の支給決定に関する要綱」(平成一五年七月一日保福障発第五三三号大田区助役決定。以下「本件要綱」という。)六条に基づき身体介護を伴う移動介護に係る居宅生活支援費の支給量を一か月当たり三二時間あるいは四二時間とする旨の決定を受けたことから、本件要綱六条は旧身体障害者福祉法に反し違法であるなどと主張して、@処分行政庁の決定のうち身体介護を伴う移動介護に係る居宅生活支援費の支給量につき一か月当たり三二時間あるいは四二時間を超える部分の申請を棄却した部分の各取消し、及び身体介護を伴う移動介護に係る居宅生活支援費の支給量を一か月当たり一二四時間とする(ただし、三二時間あるいは四二時間を下回る部分を除く。)旨の処分の義務付け、A本件要綱六条(2)及び(3)が違法であることの確認、並びにB(@)主位的に、身体障害者居宅生活支援費として金七八三万五六一〇円及び内金五六五万八九八〇円に対する平成一七年九月二七日から、内金二一七万六六三〇円に対する同一八年八月二五日から各支払済みまで民法所定の年五分の割合による金員の支払の義務付け、(A)予備的に、国家賠償として金七八三万五六一〇円及び内金五六五万八九八〇円に対する平成一七年九月二七日から、内金二一七万六六三〇円に対する同一八年八月二五日から各支払済みまで民法所定の年五分の割合による金員の支払を求める事案である。 一 関係法令等の定め 別紙1のとおり 二 前提事実 本件の前提となる事実は、次のとおりである。証拠及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる事実等は、その旨付記した。その余の事実は、当事者間に争いがない。  (1) 原告は、大田区に居住する昭和二七年二月七日生まれの男性であり、両上肢機能障害及び移動機能障害の障害を有する旧身体障害者福祉法施行規則別表第五号(身体障害者障害程度等級表)の一級に該当する身体障害者であり、身体障害者手帳の交付を受けている者である。(《証拠略》) (2) 大田区福祉オンブズマンであるAは、脳性麻ひの障害を有する申立人から、ホームヘルプサービスの時間延長の申請が認められなかったことにつき苦情申立てを受けたことから、大田北地域行政センター地域福祉課長に対し、平成一四年一二月一八日、「@障害者の相談窓口である地域福祉課在宅サービス身体障害者支援担当(以下「地域福祉課」という。)は、地域で自立生活を望む障害者の自己決定を尊重し、申立人の問題が適切に解決されるよう相談援助活動を充実されたい。Aサービスの提供に際しては、サービス量に上限があるとして制限するのではなく、また一定のサービス量を一律に提供するのでもなく、相談者の生活状況等を具体的に把握し、問題解決に必要なサービスと必要量を決定されたい。B決定されたサービスについては、当事者はもとより、必要な場合には広く区民に対しても説明責任を果たせるものとすること。」という趣旨の勧告を行った。(《証拠略》) (3) 平成一五年四月一日付けで策定された「大田区支援費の支給に関する規則」(平成一五年大田区規則第六六号。以下「大田区支援費支給規則」という。)の内容は、おおむね以下のとおりである。なお、大田区支援費支給規則は、同日施行された。(《証拠略》) ア 一条 この規則は、身体障害者福祉法(昭和二四年法律第二八三号。以下「身障法」という。)、知的障害者福祉法(昭和三五年法律第三七号。以下「知障法」という。)及び児童福祉法(昭和二二年法律第一六四号。以下「児福法」という。)に基づく居宅生活支援費及び施設訓練等支援費の支給について、必要な事項を定めるものとする。 イ 四条一項 身体障害者福祉法施行規則(昭和二五年厚生省令第一五号。以下「身障法施行規則」という。)九条の二…(略)…の居宅生活支援費の支給申請申請(略)…は、居宅生活支援費・施設訓練等支援費支給申請書(…(略)…)により行うものとする。 ウ 四条二項 居宅生活支援費の支給期間終了後も引き続き当該支援費の支給を希望する場合は、当該支援費の支給期間の末日を含む月の前月一日から申請することができる。 エ 五条一項 区長は、前条の居宅生活支援費の支給申請があったときは、身障法施行規則第九条の三…(略)…の事項を勘案事項整理票(居宅生活支援費)(…(略)…)により勘案し、支給を行うことが適切であると認めるときは、申請者に対し支援費の支給決定を行うものとする。 オ 六条一項 身障法第一七条の四第二項第一号の区長が定める基準は、身体障害者福祉法に基づく指定居宅支援等に要する費用の額の算定に関する基準(…(略)…)のとおりとする。 カ 一一条一項 身障法第一七条の五第二項…(略)…に規定する居宅生活支援費の支給決定並びに身障法施行規則第九条の四…(略)…の居宅利用者負担額の通知は、居宅生活支援費支給決定・利用者負担額決定通知書(…(略)…)及び居宅生活支援費扶養義務者分利用者負担額決定通知書(…(略)…)により行うものとする。 キ 一八条一項 身障法施行規則第九条の一二…(略)…の支給量の変更の申請は、支給量変更申請書(…(略)…)により行うものとする。 ク 一八条二項 区長は、前項の申請があったときは、第五条の規定による勘案を準用し、適当であると認めるときは、支給量の変更を行うものとする。 (4) 平成一五年七月一日付けで策定された本件要綱の内容は、おおむね以下の とおりである。なお、本件要綱は、同日施行された。(《証拠略》) ア 一条 この要綱は、大田区支援費の支給に関する規則(平成一五年大田区規則第六六号。以下「規則」という。)第五条に基づき、居宅生活支援費の一つである居宅介護支援費のうち、移動介護が中心である場合(以下「移動介護」という。)に係る支給決定を行う際に、勘案すべき事項等について必要な事項を定めるものとする。 イ 二条一項 移動介護とは、身体障害者福祉法に基づく指定居宅支援等に要する費用の額の算定に関する基準(平成一五年厚生労働省告示第二七号。以下「身障法による基準」という。)…(略)…に規定する「社会生活上必要不可欠な外出」及び「余暇活動等の社会参加のための外出」に関する移動の介護をいう。 ウ 二条二項 「社会生活上必要不可欠な外出」とは医療機関等への通院、公共機関及び金融機関等の手続きなど、社会通念上当該外出を行わないことにより、日常生活において著しい不都合を生じるとして区長が必要があると認める外出をいう。 エ 二条三項 「余暇活動等の社会参加のための外出」とは前項に該当しない目的の外出をいう。 オ 三条 屋外での移動に著しい制限のある視覚障害者(児)、全身性障害者(児)、又は知的障害者(児)のうち、本人の障害の程度や介護者の状況等を勘案した結果、外出時における移動の介護について支援が必要と認められる場合に、支給決定を行うこととする。 カ 五条 聴き取りの際には規則第第五条に定める勘案事項整理票のほか、移動介護聴き取り票(…(略)…)により、対象者の心身の状況及び移動介護の必要性等を勘案するものとする。 キ 六条 移動介護に関する支給量は、次の各号に定めるものにより算定した時間数を、合算して得た時間数とする。 (1) 第二条第二項に該当する外出については、勘案事項整理票及び移動介護聴き取り票により勘案をした結果及び別表1に掲げる事項をもとに支給量を算定するものとする。 (2) 第二条第三項については、勘案事項整理票及び移動介護聴き取り票により勘案した結果をもとに、次に掲げる時間内で支給量を算定するものとする。 ア 全身性障害者、視覚障害者及び知的障害者については月三二時間 イ 全身性障害児、視覚障害児及び知的障害児については月一六時間 (3) 前号に定めるもののほか、特段の事情により区長が必要と認める場合は、勘案事項整理票及び移動介護聴き取り票により勘案をした結果をもとに、必要な時間数を算定することができる。この場合において、区長は対象者に対して時間数の算定に必要な資料等の提出を求めることができる。 ク 七条 身体介護を伴う場合の移動介護は、次に掲げる各号のいずれかに該当する場合とする。 (1) 排せつに関し全介助又は一部介助が必要な場合 (2) 移動の際に車いすを利用しており、自走することが困難で介助を要する場合 (3) 多動や突発的な飛び出し等の行動障害があり、身体介護が必要な場合 ケ 別表1 医療機関等への通院について 医療機関等への通院に要する時間については、次に掲げる事項について勘案した上で算定することとする。 1 「医療機関等への通院」には、病院又は診療所への通院のほか、柔道整復師及びあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律に基づく施術を目的とした通所を含むこととする。 2 医療保険対象外の通院・通所については、算定しない。 3 支給量の算定の際に必要な場合、規則第五条第三項の規定に基づき、医師の診断書の提出を求めることができる。 (5)ア 処分行政庁は、原告に対し、平成一五年三月六日、以下のとおり居宅生活支援費の支給の決定(以下「支援費支給決定」という。)をした(以下、この決定を「平成一五年支援費支給決定」という。)。 支給する期間 平成一五年四月一日から同一六年三月三一日まで 居宅支援の種類 身体障害者居宅介護 支給量 移動・身体介護有 一か月当たり一二四時間 日常生活支援 一か月当たり三一〇時間 イ 処分行政庁は、原告に対し、平成一六年三月四日、以下のとおり平成一五年支援費支給決定の支給量を変更する旨の決定をした。(以下、この変更決定を「平成一六年変更決定」という。) 変更年月日  平成一六年三月一日 支給量 移動・身体介護有 一か月当たり一二四時間 日常生活支援 一か月当たり三七二時間 ウ 処分行政庁は、原告に対し、平成一六年三月三一日、以下のとおり支援費支給決定(以下「本件処分1」という。)をした。 支給する期間 平成一六年四月一日から同年九月三〇日まで 居宅支援の種類 身体障害者居宅介護 支給量 移動・身体介護有 一か月当たり三二時間 日常生活支援 一か月当たり四六五時間 エ 処分行政庁は、原告に対し、平成一六年一〇月一日、以下のとおり支援費支給決定(以下「本件処分2」という。)をした。 支給する期間 平成一六年一〇月一日から同年一二月三一日まで 居宅支援の種類 身体障害者居宅介護 支給量 移動・身体介護有 一か月当たり三二時間 日常生活支援 一か月当たり四六五時間 オ 処分行政庁は、原告に対し、平成一六年一二月二八日、以下のとおり支援費支給決定(以下「本件処分3」という。)をした。 支給する期間 平成一七年一月一日から同年三月三一日まで 居宅支援の種類 身体障害者居宅介護 支給量 移動・身体介護有 一か月当たり三二時間 日常生活支援 一か月当たり四六五時間 カ 処分行政庁は、原告に対し、平成一七年四月一日、以下のとおり支援費支給決定(以下「本件処分4」という。)をした。 支給する期間 平成一七年四月一日から同年六月三〇日まで 居宅支援の種類 身体障害者居宅介護 支給量 移動・身体介護有 一か月当たり三二時間 日常生活支援 一か月当たり四六五時間 キ 処分行政庁は、原告に対し、平成一七年七月一日、以下のとおり支援費支給決定(以下「本件処分5」といい、本件処分1から本件処分5までを併せて「本件各処分」という。)をした。 支給する期間 平成一七年七月一日から同一八年六月三〇日まで 居宅支援の種類 身体障害者居宅介護 支給量 移動・身体介護有 一か月当たり四二時間 日常生活支援 一か月当たり四五五時間' (6)ア 原告は、処分行政庁に対し、平成一六年五月三一日、本件処分1、につき異議申立てをした。 イ 原告は、処分行政庁に対し、平成一六年一一月一七日、本件処分2につき異議申立てをした。 ウ 原告は、処分行政庁に対し、平成一七年二月一五日、本件処分3につき異議申立てをした。 エ 原告は、処分行政庁に対し、平成一七年五月一〇日、本件処分4につき異議申立てをした。 (7) 原告は、平成一七年八月三〇日、本件訴えを提起した。(当裁判所に顕著な事実) 三 争点 (1) 旧身体障害者福祉法の居宅生活支援費の規定に基づく本件各処分につき、当該規定が廃止された現時点において、その取消しを求める訴え及び居宅生活支援費の支給量の決定の義務付けを求める訴えは適法か。 (2) 本件各処分は適法か。 (3) 本件要綱の違法確認の訴えは適法か。 (4) 抗告訴訟たる義務付けの訴えとしての金員の支払を求める訴えは適法か。 (5) 被告の公務員に国家賠償法上の違法があるか。 四 当事者の主張の要旨 (1) 争点(1)について 別紙2のとおり (2) 争点(2)について 別紙3のとおり (3) 争点(3)について 別紙4のとおり (4) 争点(4)について 別紙5のとおり (5) 争点(5)について 別紙6のとおり 第三 当裁判所の判断 一 認定事実 前記前提事実に加え、証拠及び弁論の全趣旨(各事実の後に付記する。)によると、以下の事実を認めることができる。 (1) 原告は、昭和二七年二月七日生まれの男性であり、出生直後、脳性小児麻ひと診断された。原告は、現在、大田区内において独居しており、脳性麻ひによる両上肢機能障害及び移動機能障害の障害を有する旧身体障害者福祉法施行規則別表第五号(身体障害者障害程度等級表)の一級に該当する身体障害者であり、身体障害者手帳の交付を受けている者である。(前記前提事実、《証拠略》、弁論の全趣旨) (2) 原告は、平成一五年三月まで、「大田区心身障害者(児)ホームヘルプサービス事業実施要綱」(昭和五八年三月二九日付け洗祉発第三四八号大田区助役決定。以下「ホームヘルプサービス事業実施要綱」という。《証拠略》)及び「大田区全身性障害者介護人派遣サービス運用基準」(平成九年一二月一八日付け保福保発第一七三三号決定。以下「介護人派遣サービス運用基準」という。《証拠略》)に基づき、身体障害者ホームヘルプサービス及び全身性障害者介護人派遣サービスの提供を受けていた。 なお、外出に伴う介護につき、ホームヘルプサービス事業実施要綱は、三条(二)カにおいて「外出…(略)…介助」として規定し、介護人派遣サービス運用基準は、四(一)カにおいて「外出の介護」として規定していたが、いずれも外出に伴う介護を他の介護と併せて全体として提供することとしており、外出に伴う介護につき独立して支給量を定める旨の規定は存在していなかった。 原告が平成一五年一月から同年三月までの間に受けていたサービスの内容は、以下のとおりである。(前記前提事実、《証拠略》、証人岩田) ア 平成一五年一月 身体障害者ホームヘルプサービス 二七時間 全身性障害者介護人派遣サービス 二四八時間 合計         二七五時間 イ 平成一五年二月 身体障害者ホームヘルプサービス 二七時間 全身性障害者介護人派遣サービス 二二四時間 合計         二五一時間 ウ 平成一五年三月 身体障害者ホームヘルプサービス 八六時間 全身性障害者介護人派遣サービス 二四八時間 合計         三三四時間 (3)ア 原告は、平成一五年三月三日、処分行政庁あてに「居宅生活支援費 施設訓練等支援費 支給申請書」を提出した。(《証拠略》) イ 処分行政庁は、原告の居宅生活支援費の支給量を決定するに当たり、旧身体障害者福祉法一七条の五第二項所定の事項を勘案し、原告に対する介護サービスの内容及び程度につき、居宅生活支援費制度の運用に関する関係諸基準が整備されるまでの間、原告が従前受けていた介護サービスの内容及び程度を下回らないよう配慮することを原則とし、その当時原告の日常生活動作が従前より低下していたため、一日当たりのサービス時間数をそれまでの一一時間から一四時間とした上、身体介護を伴う移動介護については、宗教活動のための外出を除き、原告の意向を尊重して従前の外出に伴う支給量を維持することとした。(弁論の全趣旨) ウ 処分行政庁は、上記事項を勘案した結果、原告に対し、平成一五年三月六日、以下のとおり平成一五年支援費支給決定をした。(前記前提事実) 支給する期間 平成一五年四月一日から同一六年三月三一日まで 居宅支援の種類 身体障害者居宅介護 支給量 移動・身体介護有 一か月当たり一二四時間 日常生活支援 一か月当たり三一〇時間 (4)ア(ア) 原告は、平成一五年一二月二日、移動介護の支給量を日常生活支援に変更するとともに、夜間の介護が必要な場合に対応するために、日常生活支援の支給量を一日当たり二時間増やして欲しい旨の支給量変更申請書を処分行政庁あてに提出した。(《証拠略》) (イ) 大田北地域行政センター地域福祉課の職員であったB(以下「B」という。)は、平成一五年一二月二日、同一六年一月九日、同月一三日及び同月二七日、原告につき勘案事項の調査等をした。(《証拠略》、証人B) (ウ) 原告は、平成一六年二月二七日、前記(ア)の申請を取り下げた。(《証拠略》) イ 原告は、平成一六年二月二七日、日常生活支援の支給量を一日当たり一六時間とする旨の支給量変更申請書を処分行政庁あてに提出した。(《証拠略》) ウ B及び大田北地域行政センター地域福祉課の職員であったC(以下「C」という。)は、平成一六年三月二日、原告宅を訪れ、原告につき勘案事項の調査をした。それを基に、Bは、同日付け「日常生活支援聴き取り票」(《証拠略》)及び同月三日付け「支援費増量申請(鈴木敬治)」と題する文書(《証拠略》)を作成した。(《証拠略》、証人B) (ア) 平成一六年三月二日付け「日常生活支援聴き取り票」の「5 外出に関する支援(医療機関等への通院を除く)」の「(1)通院以外の社会生活上必要不可欠な外出に関する支援」欄には、郵便局及び銀行といった金融機関への外出等一か月当たり三二時間一二分を要する旨の記載があり、また、「(2)社会参加のため外出に関する支援」欄には、共生・共走マラソンのための外出等一か月当たり九七時間四五分を要する旨の記載がある。 (イ) また、平成一六年三月三日付け「支援費増量申請(鈴木敬治)」と題する文書には、以下のような記載がある。 「1 障害種類及び程度、その他の心身の状況 脳性まひによる両上肢機能障害、移動機能障害 一種一級(全身性障害者) 言語機能障害(言語コミュニケーション能力不十分)‥手帳なし 嚥下機能障害(身体機能の低下に伴うもの)‥手帳なし 腎孟腎炎 平成一五年に突発的な発熱により四度の入院歴あり、それ以降身体状況は悪化、居宅内でも全面的に車椅子移動となった。左ひざの痛みも激しい。夜間のトイレは這っていくが、両足機能が十分機能しないため、手を使い這う。この間、途中での失禁やわき腹、顔面を強打することが度々あった。 2 介護を行うものの状況 家族の援助は全く望めない単身生活者である。 介護は福祉制度を利用する以外の方法なし。 3 支援費受給制度 現在、一日一四時間のホームヘルプを支援費サービスで受給中 内訳は日常生活支援一〇時間、移動介護四時間 4 支援費以外の保健医療サービス又は福祉サービスの利用状況 生計・医療は生活保護 牧田病院訪問看護を利用(火曜日一三時三〇分〜一四時頃) 二月より「なかがわ治療院」の往診マッサージ(月・水・金、一五:四〇〜一六:三〇)を受けている。 5 支援費増量に関する本人の意向 現在は起きている間の一四時間のみ支援費サービスを受けているが、急な発熱及び夜間のトイレ、水分補給、寝返り対応にプラス六時間を希望。現実的に、急な発熱時等は日中の介護時間を削ったりボランティア(無償)で対応している。 なお、平成一六年一二月に一日一六時間の増量申請(移動介護を廃し日常生活支援増量)を行ったが、本人の移動介護を継続して行っていきたいとの希望が強く今回の申請となった。また、一五年一二月に申請を行ったが未だ決定できないことに強い不服あり。 6 本人の置かれている環境 本人は単独では全く何もできない。ベッドからの起き上がりも本人は両腕を畳むのみで介護人の全面的な介助によっているような状況である。 住居状況は1DKの部屋、居室は畳、DKはフローリング、トイレ・浴室の住宅改造を予定。 7 居宅支援の提供体制の整備状況 長時間サービスの受給者であり、対応できる居宅介護事業者は限られている。 以上のような勘案事項を調査した結果、担当として一定程度の夜間介護の支援は必要性と考えられる。 また、日常生活の状況から、現状では日中の介護支援を削減することは困難であると考えられる。」 エ 処分行政庁は、上記勘案事項の調査を踏まえ、一日当たり二時間の夜間介護の必要性を認めたことから、原告に対し、平成一六年三月四日、以下のとおり平成一五年支援費支給決定の支給量を変更する旨の平成一六年変更決定をした。(前記前提事実、弁論の全趣旨) 変更年月日 平成一六年三月一日 支給量 移動・身体介護有 一か月当たり一二四時間 日常生活支援 一か月当たり三七二時間 (5)ア Cは、平成一六年三月二九日、原告に係る勘案事項の調査のため原告宅を訪れたが、本件要綱のことに話が終始し、原告が調査を受けることを拒んだことから、調査をすることができなかった。  そこで、Cは、同月二日に行われた調査の時点と比べ原告に大きな変化がないものと判断し、同日付け「日常生活支援聴き取り票」及び同月三日付け「支援費増量申請(鈴木敬治)」と題する文書を基に、同月二九日付け「日常生活支援聴き取り票」(《証拠略》)及び同日付け「勘案事項整理票」(《証拠略》)を作成した。(《証拠略》、証人B) イ 原告は、平成一六年三月三一日、処分行政庁あてに「居宅生活支援費施設訓練等支援費 支給申請書」を提出した。(《証拠略》) ウ(ア) 処分行政庁は、前記アの勘案事項の調査を踏まえ、身体介護として、入浴の介助、排せつの介助、食事(服薬を含む)の介助、衣類着脱の介助、身体の清拭及び洗髪、その他必要な身体の介護(体位変換、起き上がり及び就寝、車いす等の乗降、自宅内の移動、その他日常の介護)並びに通院の介助が必要であると判断し、そのために要する時間を一か月当たり三四四時間、家事援助として、調理、衣類等の洗濯及び補修、住居等の掃除及び整理整とん並びに生活必需品の買物が必要であると判断し、そのために要する時間を一か月当たり七八時間三〇分、夜間の見守りが必要であると判断し、そのために要する時間を一か月当たり四一時間二〇分とそれぞれ算定した。(《証拠略》) (イ) また、処分行政庁は、上記勘案事項の調査において、原告が移動介護に係る支給量を算定するために必要な外出の具体的な状況等に関する聞き取りに応じなかったため、従前の原告の外出のほとんどが余暇活動等の社会参加のための外出に当たるものであったこと及び原告が従前どおりの外出の意欲や意向を示していたことから、本件要綱六条(2)ア所定の「余暇活動等の社会参加のための外出」に係る支給量を三二時間と算定し、また、本件要綱六条(1)所定の「社会生活上必要不可欠な外出」に係る支給量を零と算定し、合計三二時間を原告の移動介護に係る支給量として定めた。(《証拠略》、弁論の全趣旨) エ 処分行政庁は、上記判断を踏まえ、原告に対し、平成一六年三月三一日、以下のとおり本件処分1をした。(前記前提事実) 支給する期間 平成一六年四月一日から同年九月三〇日まで 居宅支援の種類 身体障害者居宅介護 支給量 移動・身体介護有 一か月当たり三二時間 日常生活支援 一か月当たり四六五時間 オ 原告は、処分行政庁に対し、平成一六年五月三一日、本件処分1につき異議申立てをした。(前記前提事実) (6)ア 大田北地域行政センター地域福祉課長は、原告の本件処分1に係る居宅生活支援費の支給期間が平成一六年九月三〇日までであるにもかかわらず、原告が支給申請書を提出せず、また、勘案事項の調査にも応じなかったことから、原告に対し、同月九日、支給申請書を提出し勘案事項の調査に協力するよう文書をもって促した。(《証拠略》) イ 処分行政庁は、原告から支給申請書が提出されず、勘案事項の調査にも応じなかったものの、原告の支給申請の意思を確認でき、また、原告の身体及び障害の状況や介護環境に大きな変化が認められなかったことから、平成一六年三月二日に行われた勘案事項の調査結果を基に、原告に対し、同年一〇月一日、以下のとおり本件処分2をした。(前記前提事実、《証拠略》、証人B) 支給する期間 平成一六年一〇月一日から同年一二月三一日まで 居宅支援の種類 身体障害者居宅介護 支給量 移動・身体介護有 一か月当たり三二時間 日常生活支援 一か月当たり四六五時間 ウ 原告は、処分行政庁に対し、平成一六年一一月一七日、本件処分2につき異議申立てをした。(前記前提事実) (7)ア 処分行政庁は、原告の本件処分2に係る居宅生活支援費の支給期間が平成一六年一二月三一日までであるにもかかわらず、原告が支給申請書を提出しなかったことから、原告に対し、同月一日、支給申請書を提出するよう文書をもって促した。(《証拠略》) イ 処分行政庁は、原告から支給申請書が提出されず、勘案事項の調査にも応じなかったものの、原告の支給申請の意思を確認できたことから、平成一六年三月二日に行われた勘案事項の調査結果を基に、原告に対し、同年一二月二八日、以下のとおり本件処分3をした。(前記前提事実、《証拠略》、証人B、弁論の全趣旨) 支給する期間 平成一七年一月一日から同年三月三一日まで 居宅支援の種類 身体障害者居宅介護 支給量 移動・身体介護有 一か月当たり三二時間 日常生活支援 一か月当たり四六五時間 ウ 原告は、処分行政庁に対し、平成一七年二月一五日、本件処分3につき異議申立てをした。(前記前提事実) (8)ア 処分行政庁は、原告の本件処分3に係る居宅生活支援費の支給期間が平成一七年三月三一日までであるにもかかわらず、原告が支給申請書を提出しなかったことから、原告に対し、同年二月二五日、支給申請書を提出するよう文書をもって促した。(《証拠略》) イ 処分行政庁は、原告から支給申請書が提出されず、勘案事項の調査にも応じなかったものの、原告の支給申請の意思を確認できたことから、原告に対し、平成一七年四月一日、以下のとおり本件処分4をした。(前記前提事実、《証拠略》、証人B、弁論の全趣旨) 支給する期間 平成一七年四月一日から同年六月三〇日まで 居宅支援の種類 身体障害者居宅介護 支給量 移動・身体介護有 一か月当たり三二時間 日常生活支援 一か月当たり四六五時間 ウ 原告は、処分行政庁に対し、平成一七年五月一〇日、本件処分4につき異議申立てをした。(前記前提事実) (9)ア 処分行政庁は、原告の本件処分4に係る居宅生活支援費の支給期間が平成一七年六月三〇日までであるにもかかわらず、原告が支給申請書を提出しなかったことから、原告に対し、同年五月三〇日、支給申請書を提出するよう文書をもって促し、また、大田北地域行政センター地域福祉課長は、同年六月二三日、支給申請書を提出し勘案事項の調査に応じるよう文書をもって促した。(《証拠略》) イ 原告は、平成一七年六月二九日、処分行政庁あてに「居宅生活支援費施設訓練等支援費 支給申請書」を提出し、勘案事項の調査に応じた。(《証拠略》、弁論の全趣旨) ウ Bは、平成一七年六月二九日、原告につき勘案事項の調査を行い、その結果、同日付け「勘案事項整理票(居宅生活支援費)」(《証拠略》)及び同日付け「日常生活支援聴き取り票」(《証拠略》)を作成した。当該「日常生活支援聴き取り票」の「5 外出に関する支援(医療機関等への通院を除く)」の「(1)通院以外の社会生活上必要不可欠な外出に関する支援」欄には、「銀行」、「区役所手続(生保他)」、「身障申請」及び「床屋」として一か月当たり合計一〇時間を要する旨の記載があり、また、「(2)社会参加のための外出に関する支援」欄には、「共生・共走マラソン」のために一か月当たり四八時間を要する旨等の記載がある。(《証拠略》、証人B) エ また、平成一七年六月二九日付け「鈴木敬治氏移動介護聞き取り調査調査(17・6・29)」には、以下のとおりの記載がある。(《証拠略》) 「1 共生・共走マラソン ・マラソンは東京、大阪で実施 ・鈴木氏は東京の事務局「いいとも」の副事務局長。会は障害者団体のみでなぐ、地域の仲間も加わっている。 ・会の目的は、「スポーツを通してノーマライゼーションを図る」こと ・事務局の仕事は、事業実施のために後援の依頼(昨年度は東京都、大田区、品川区、目黒区、港区が後援している)、呼びかけ(ポスター等の作製)、広告依頼等、多岐にわたる。 ・当事業は一〇年前より実施している。 ・鈴木氏は実施当初よりのメンバー ・今年は一〇月二二日に東京大会を八潮公園で実施予定 ・本事業を通じ、米国バークリー自立生活グループと相互交流を図っている。今年は八月八日に大森スポーツセンターでスポーツ交流事業を実施予定 ・定例会は隔週月曜日、午後六時〜一〇時頃その他事務局業務が月四回程度 ・時間数は一回六時間×月八回 2 障害者雇用問題従事 ・東京南部労働組合(地域労組)の副委員長として、地域で生活していく障害者の生活や悩み、相談を聞くこと、労災や障害年金の相談を行うこと。 ・場所は五反田の事務所、または相談者の自宅等 ・報酬は出ていない。 ・時間数は一回五時間×月八回 3 介護保障を求める運動 ・組織的には、全国公的介護保障要求者組合(別添資料)が全国レベルであり、在宅障害者の公的介護保障を求める会が都レベルである。 ・会合は全国レベルの会議が国立で、都レベルの会合が府中・新宿である。 ・鈴木氏は区レベルでも独自に活動中。三障害をネットワーク化したい希望あり。 ・参加状況は国レベル会議に月三回、都レベル会議に月三回(大田区で実施するときは生活センター等を使用)程度ある。 ・時間数としては八時間×月三回(国立)、七時間×月三回(府中、  新宿) 4 学校や自治体からの要請に基づくもの 今年度実施したものとして ・四月‥一橋大学ゼミよりの要請で講演(報酬等はなし) ・五月‥神奈川県研修(青い芝の会の一員として参加)(報酬等なし)‥別添資料 ・六月‥都立広尾高校からの要請(報酬等なし)‥別添資料 ・時間数は一回六時間×月一回 5 東京交通行動実行委員会(バリアフリー) ・DPIを中心に各種障害者団体が参加 ・会合は新宿、田町等 ・時間数は一回六時間×月一回 6 議会等の傍聴等 ・国の厚生労働委貴会の傍聴や都議会、区議会の傍聴。請願に係る活動 ・時間数は一回六時間×月三回 7 友人との交流や余暇 ・友人との交流や映画鑑賞、野球観戦 ・時間数は一回六時間×月二回 日程が重複したり、障害状況から出席できなくなることもあり、月平均として一二四時間程度の移動となる。」 オ 原告は、平成一七年六月二九日の勘案事項の調査の際、Bらから、本件要綱六条(3)の適用を判断するための資料の提出があれば、本件要綱六条(3)を適用し三二時間を超える支給量の算定を検討する用意がある旨の話をされたが、当該資料の提出を拒否した。(《証拠略》、証人B) カ(ア) 処分行政庁は、上記勘案事項の調査を踏まえ、身体介護として、入浴の介助、排せつの介助、食事(服薬を含む)の介助、衣類着脱の介助、その他必要な身体の介護(体位変換、起き上がり及び就寝、車いす等の乗降、自宅内の移動、水分補給)並びに通院の介助が必要であると判断し、そのために要する時間を一か月当たり三二七時間三〇分、家事援助として、調理、衣類等の洗濯及び補修、住居等の掃除及び整理整とん並びに生活必需品の買物が必要であると判断し、そのために要する時間を一か月当たり九六時間三〇分、コミュニケーション支援及び家電製品等の操作に対する支援が必要であると判断し、そのために要する時間を一か月当たり三一時間とそれぞれ算定した。(《証拠略》) (イ) また、処分行政庁は、通院以外の社会生活上必要不可欠な外出として、銀行に行くために一か月当たり四時間、区役所へ行くために一か月当たり四時間、散髪のために一か月当たり二時間と算定した。(《証拠略》) キ 処分行政庁は、勘案事項の調査の結果、従前の移動介護の支給量には含まれていなかった本件要綱六条(1)所定の「社会生活上必要不可欠な外出」が一〇時間分認められたものの、原告が同条(3)所定の「特段の事情」を認めるに足りる客観的な資料を提出せず、「特段の事情」の存否について判断することができなかったことから、従前の支給量である一か月当たり三二時間に新たに認められた一〇時間を加え、一方、日常生活支援に係る支給量を一〇時間控除し、原告に対し、平成一七年七月一日、以下のとおり本件処分5をした。(前記前提事実、弁論の全趣旨) 支給する期間 平成一七年七月一日から同一八年六月三〇日まで 居宅支援の種類 身体障害者居宅介護 支給量 移動・身体介護有 一か月当たり四二時間 日常生活支援 一か月当たり四五五時間 二 争点について (1) 争点(1)(本件各処分の取消しを求める訴え等の適法性)について ア 一般に、申請に対する拒否処分の取消訴訟における訴えの利益は、申請に対する許可等の処分によって生ずべき法律上の地位の取得それ自体にではなく、このような地位取得の可能性の回復という点に存するのであるが、この両者の間には密接な関係があり、拒否処分の取消しの結果行政庁が当初の申請に対し改めて許否の決定をすべき拘束を受けることとなっても、既に何らかの理由によって適法にこのような許可等の処分をすることができず、ひいてはこれによる法律上の地位の取得自体が不可能となるに至ったと認められるような事由が生じた場合には、許可等の処分を受ける可能性の回復を目的とする拒否処分の取消しを求める訴えの利益もまた、失われるに至ったものといわなければならない(最高裁昭和五一年(行ツ)第二四号同五七年四月八日第一小法廷判決・民集三六巻四号五九四頁参照)。 そして、この理は、義務付けの訴えに併合して提起された処分の取消訴訟についても変わるものではない。 イ これを本件についてみると、本件は、原告の旧身体障害者福祉法一七条の五第一項に基づく居宅生活支援費の支給の申請に対し、処分行政庁が身体介護を伴う移動介護に係る居宅生活支援費の支給量を一か月当たり三二時間(本件処分1ないし4)あるいは四二時間(本件処分5)としたことにつき、三二時間あるいは四二時間を超える部分について原告の支給申請を棄却した処分行政庁の処分の取消しを求める訴訟であるところ、同条は、障害者自立支援法附則三四条により平成一八年四月一日をもって廃止されており、旧身体障害者福祉法四条の二第二項に規定する身体障害者居宅介護のうち外出介護に該当するものを除くものを受けている障害者については、障害者自立支援法の施行日である平成一八年四月一日に、居宅介護に係る介護給付費の支給決定を受けたものとみなされ(障害者自立支援法施行令附則五条六項)、外出介護に該当するものを受けている障害者については、同日に、外出介護に係る介護給付費の支給決定を受けたものとみなされる(同条七項)のであるから、仮に本件各処分を取り消したとしても、処分行政庁は改めて原告が本件訴えにおいて求めている処分をする法律上の根拠を失っており、これによる法律上の地位の取得自体が不可能となるに至ったといわざるを得ないから、本件各処分の取消しを求める訴えの利益もまた、失われるに至ったものといわなければならない。 ウ 以上のとおり、本件各処分の取消しを求める訴えの利益が失われたといわざるを得ないから、本件各処分の取消訴訟は不適法である。 そして、行政事件訴訟法三七条の三第一項柱書、二号によると、いわゆる申請型の義務付けの訴えにおいては、行政庁に対し一定の処分を求める旨の法令に基づく申請を棄却する旨の処分が取り消されるべきものであることは、義務付けの訴えの訴訟要件であると解すべきところ、本件各処分の取消訴訟は不適法であるから、身体介護を伴う移動介護に係る居宅生活支援費の支給量の決定の義務付けの訴えは、不適法な訴えといわざるを得ない。 (2) 争点(2)(本件各処分の適法性)について ア 前記(1)のとおり、本件各処分の取消しを求める訴えは、訴えの利益を欠く点において不適法な訴えというべきであるから、却下を免れないが、審理の経過及び事案の性質を考慮し、本件各処分の適法性について検討することとする。 イ 身体障害者は、居宅生活支援費の支給を受けようとするときは、身体障害者居宅支援の種類ごとに、厚生労働省令の定めるところにより、市町村に申請しなければならず(旧身体障害者福祉法一七条の五第一項)、上記申請があったときは、市町村は、@居宅生活支援費の支給の申請を行つた身体障害者の障害の種類及び程度その他の心身の状況、A当該身体障害者の介護を行う者の状況、B当該身体障害者の居宅生活支援費の受給の状況、C当該身体障害者の施設訓練等支援費の受給の状況、D当該身体障害者の身体障害者居宅支援及び身体障害者施設支援以外の保健医療サービス又は福祉サービス等の利用の状況、E当該身体障害者の身体障害者居宅支援の利用に関する意向の具体的内容、F当該身体障害者の置かれている環境、G当該申請に係る身体障害者居宅支援の提供体制の整備の状況を勘案して、居宅生活支援費の支給の要否を決定し(同条第二項、旧身体障害者福祉法施行規則九条の三)、支給の決定を行う場合には、居宅生活支援費を支給する期間及び身体障害者居宅支援の種類ごとに一月間に居宅生活支援費を支給する指定居宅支援の量(支給量)を定めなければならない(旧身体障害者福祉法一七条の五第三項、旧身体障害者福祉法施行規則九条の五)。 ウ 以上のような旧身体障害者福祉法等の規定によると、市町村が居宅生活支援費の支給量を定めるに当たって、個別の身体障害者に係る勘案事項を勘案することのほか、何ら具体的な基準を定めていないから、個別の身体障害者に係る勘案事項を勘案し、各身体障害者に対しいかなる種類の身体障害者居宅支援をいかなる支給量をもって行うかということは、勘案事項の調査の結果を踏まえた市町村の合理的裁量にゆだねられているというべきである。したがって、裁判所が身体障害者に対してされた支給量に係る決定の適否を審査するに当たっては、当該決定が裁量権の行使として行われたことを前提として、その判断の適程において考慮すべき事項を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし妥当性を欠くものと認められるような場合に、裁量権の範囲を逸脱し、又は濫用したものとして違法となると判断すべきものと解するのが相当である。 エ(ア) これを本件についてみると、被告は、原告が本件処分1ないし本件処分4をするための勘案事項の調査を拒んだことを理由に、「社会生活上必要不可欠な外出」に係る支給量を算定することができなかったとして、処分行政庁が当該支給量を零と定めたことは適法である旨主張する。 (イ) しかし、前記認定事実のとおり、処分行政庁は、遅くとも平成一六年変更決定をした平成一六年三月二日に行われた勘案事項の調査によって、原告が郵便局及び銀行といった金融機関への外出等をしていることを認識していたところ、本件要綱によっても、金融機関の手続のための外出は「社会生活上必要不可欠な外出」とされているのである。 したがって、本件処分1ないし本件処分4をした当時、処分行政庁は、原告が「社会生活上必要不可欠な外出」をしていることを認識しており、これを身体介護を伴う移動介護に係る支給量を定めるに当たって考慮すべきであったにもかかわらず、これを考慮しなかったのであるから、その結果本件処分1ないし本件処分4は、その内容が社会通念に照らし妥当性を欠くものと認められるというべきであり、処分行政庁は、その有する裁量権の範囲を逸脱したものといわざるを得ない。 (ウ) この点、前記認定事実のとおり、原告は、本件処分1ないし本件処分4をするための勘案事項の調査を拒んでいるのであるから、処分行政庁が身体介護を伴う移動介護に係る支給量を定めるに当たって困難が生じていたであろうことは否定し難い。 しかし、処分行政庁は、本件処分1ないし本件処分4をする以前に、必ずしもそのための勘案事項の調査としては十分な調査ではなかったとはいえ、平成一六年変更決定のための勘案事項の調査だけでなく、平成一五年支援費支給決定のための勘案事項の調査や、それまでのホームヘルプサービス事業実施要綱及び介護人派遣サービス運用基準に基づく身体障害者ホームヘルプサービス及び全身性障害者介護人派遣サービスを提供するための調査等により、原告の外出に関する事情を認識していたのであるから、それらの調査結果を基に、処分行政庁の有する合理的裁量の範囲内で「社会生活上必要不可欠な外出」に係る支給量を定めるべきであったのであり、原告が本件処分1ないし本件処分4をするための勘案事項の調査を拒んだことをもって、直ちに「社会生活上必要不可欠な外出」に係る支給量を零と定めたことは、考慮すべき事項を考慮しなかったと評価せざるを得ない。 (エ) さらに、被告は、平成一六年三月二日に行われた勘案事項の調査は、日常生活支援の支給量の変更申請に基づき、日常生活支援の支給量変更の判断資料を得るために行われたものであるから、移動介護に係る支給量に関する調査とは聴取目的等を異にする旨主張する。 確かに、同日に行われた勘案事項の調査は、被告主張のとおり、日常生活支援の支給量の変更のために行われた調査であるが、その調査の過程の中で、処分行政庁が「社会生活上必要不可欠な外出」であると位置付けている金融機関の手続のための外出を原告がしていることを把握できたのであるから、そのことを考慮することなく本件処分1ないし本件処分4をしたことは、やはり考慮すべき事項を考慮しなかったものといわざるを得ない。 オ(ア) 次に、被告は、本件各処分に当たり「余暇活動等の社会参加のための外出」に係る支給量を定めるにつき、原告が本件処分1ないし本件処分4をするための勘案事項の調査を受けることを拒み、あるいは、本件処分5をするための勘案事項の調査において資料を提出しなかったことを理由に、本件要綱六条(3)所定の「特段の事情」が認められないとして、当該支給量を本件要綱六条(2)所定の三二時間と定めた本件各処分は適法である旨主張し、原告は、本件各処分について、そもそも当該支給量を月三二時間以内と定めた本件要綱六条(2)は違法である旨主張する。 (イ) ところで、市町村は、身体障害者が旧身体障害者福祉法一七条の五第一項の規定により居宅生活支援費の支給の申請をしたときは、当該申請を行った身体障害者の障害の種類及び程度、当該身体障害者の介護を行う者の状況、当該身体障害者の居宅生活支援費の受給の状況その他旧身体障害者福祉法施行規則九条の三で定める事項を勘案して、居宅生活支援費の支給の要否を決定し(旧身体障害者福祉法一七条の五第一項、二項)、支給の決定を行う場合には、居宅生活支援費を支給する期間及び身体障害者居宅支援の種類ごとに月を単位として旧身体障害者福祉法施行規則九条の五で定める期間において居宅生活支援費を支給する指定居宅支援の量を定めなければならない(旧身体障害者福祉法一七条の五第三項)。そして、大田区は、居宅生活支援費の支給について大田区支援費支給規則を定めており、大田区長は、居宅生活支援費の支給申請があったときは、旧身体障害者福祉法施行規則九条の三の事項を勘案事項整理票により勘案し、支給を行うことが適切であると認めるときは、申請者に対し支援費の支給決定を行う(大田区支援費支給規則五条一項)が、居宅生活支援費のうち移動介護が中心である場合に係る支給決定を行う際に勘案すべき事項等については本件要綱を定めており、「余暇活動等の社会参加のための外出」に関する移動介護の支給量は、全身性障害者、視覚障害者及び知的障害者については月三二時間以内とされ(本件要綱六条(2)ア)、特段の事情により大田区長が必要と認める場合には、月三二時間を超えることができるとされている(本件要綱六条3号)。なお、本件要綱が平成一五年七月一日に制定、施行されるまでは、ホームヘルプサービス事業実施要項及び介護人派遣サービス運用基準が定められていたが、ホームヘルプサービス事業実施要項及び介護人派遣サービス運用基準において移動介護の支給量について上限を定めてはいなかった。 (ウ) しかし、身体障害者が外出する時間は、身体障害者各人により千差万別であり、そのうちのいかなる範囲の外出が居宅生活支援費という公費を支出するのに社会通念上適当なものであるか否かということもまた、千差万別である。そこで、旧身体障害者福祉法等は、身体障害者に対して個別に勘案事項の調査を行うことを前提に、その調査結果を基に、いかなる場合にいかなる支給量を定めるかということにつき、各身体障害者ごとに個別に判断することを求めているものと解するのが相当である。  ところが、本件要綱六条(2)及び(3)は、身体介護を伴う移動介護に係る居宅生活支援費の支給量のうち、「余暇活動等の社会参加のための外出」に係る支給量を、一律に原則として一か月当たり三二時間以内とし、三二時間を超えることができるのは処分行政庁が「特段の事情」があると認めた場合に限るものとして、三二時間を超える場合は三二時間以内の場合に比べて厳格な判断基準を設けている。このような本件要綱の「特段の事情」の有無の判断が厳格に行われた場合には、それまで必要として支給されていた移動介護に係る支給量が激減することになる者が現れることも考えられるところ、そのような事態は、旧身体障害者福祉法等の趣旨に反するものといわざるを得ない。 (エ) この点につき、被告は、一か月当たり三二時間という基準は、健常者の一週間当たりの平均的な余暇活動の時間が八時間であることを基に定められた基準であると主張し、また、総務省統計局が平成一三年に実施した「社会生活基本講査」において、一五歳以上の「積極的自由時間活動が一日当たり一時間一〇分であることからも相当であると主張する。  しかし、仮に健常者の一週間当たりの平均的な余暇活動の時間が八時間であるとしても、そのことから、直ちに身体障害者の「余暇活動等の社会参加のための外出」に係る支給量として一律に一か月当たり三二時間という基準を設けることが合理的であるということは困難である。また、社会生活基本調査は、総務大臣の指定する国勢調査の調査区において総務大臣の定める方法により都道府県知事が選定した世帯の世帯員について行うものであるから(社会生活基本調査規則五条)、これを基準に身体障害者の「余暇活動等の社会参加のための外出」に係る支給量として、一律に一か月当たり三二時間という基準を設けることの合理性を見出すこともまた、困難といわざるを得ない。 (オ) もっとも、居宅生活支援費が公費をもって賄われている以上、そこに財政上一定の制約があることは否定し難く、身体障害者が居宅生活支援費の支給の申請をした場合に、その申請に係るすべての時間を居宅生活支援費として支給しなければならないものではない。  しかし、本件全証拠を精査してみても、一か月当たり三二時間という基準と被告における財政上の制約との間に合理的な関連性を見出すことはできない。 (カ) 以上によると、「余暇活動等の社会参加のための外出」に関する移動介護に係る支給量を、一律に原則として一か月当たり三二時間以内とし、三二時間を超えることができるのは処分行政庁が「特段の事情」があると認めた場合に限るものとする旨の本件要綱を定め、これに基づいて処分行政庁が「余暇活動等の社会参加のための外出」に関する移動介護に係る支給量を決定することは、少なくとも、当該決定によってそれまで必要として支給されていた移動介護に係る支給量が激減することとなる障害者についてこれを行う限りにおいては、裁量権の範囲を逸脱し、又は濫用したものとして違法となるというべきである。 (キ) これを本件各処分についてみると、処分行政庁は、前記一(4)ウのとおり、平成一六年三月二日の原告に係る調査の結果、「共生・共走マラソン」のための外出等一か月当たり九七時間四五分を要する旨を同日付け「日常生活支援聴き取り票」に記載しているのであり、さらに、本件処分5について、前記一(9)エのとおり、同一七年六月二九日に行われた勘案事項の調査により、「共生・共走マラソン」のために原告が一か月当たり四八時間の外出をすることを要すること等を認識していたところ、この「共生・共走マラソン」は、被告が後援しているもので(《証拠略》)、そのための外出は「余暇活動等の社会参加のための外出」として認められる余地があったものであり(証人B)、同日付け「鈴木敬治氏移動介護聞き取り調査(17・6・29)」(《証拠略》)にも、この「共生・共走マラソン」について相当程度詳細に記載されていた。また、平成一五年支援費支給決定においては移動介護として一か月当たり一二四時間支給されていたところ、本件全証拠を精査しても、同一五年三月三一日までと同年四月一日以降において原告の生活に特段の変化があったことはうかがわれないのであるから、原告は、同月以降も平成一五年支援費支給決定と同程度の移動介護に係る支給量を必要としていたものと認められるところ、それにもかかわらず、本件要綱に従うことによって、原告については、それまで必要として支給されていた移動介護に係る支給量が約四分の一又は三分の一に激減することとなるのである。 カ そうすると、本件各処分は、旧身体障害者福祉法等の趣旨に反して、その判断の過程において考慮すべき事項を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし妥当性を欠くものといわざるを得ないから、処分行政庁が有する裁量権の範囲を逸脱したものとして、違法な処分というべきものである。 (3) 争点(3)(本件要綱の違法確認の訴えの適法性)について ア 原告は、行政事件訴訟法四条所定め当事者訴訟として、本件要綱の違法確認を求めている。 イ しかしながら、本件要綱は、大田区支援費支給規則五条に基づき、居宅生活支援費の一つである居宅介護支援費のうち移動介護が中心である場合に係る支給決定を行う際に勘案すべき事項等について必要な事項を定めたものであり(一条)、行政の統一性及び公平性を確保するために、大田区助役がその取扱いの準則を定め、下級行政機関に対してその遵守を命じたものにすぎないのであって、下級行政機関を拘束するのみで、住民の権利義務に直接影響を及ぼすものではなく、したがって、被告の住民である原告と被告との間に直ちに法律関係を生じさせるものではない。そうすると、本件要綱の内容それ自体が原告と被告との間の公法上の法律関係を規定するものであるとはいえず、本件要綱の違法確認を求める訴えが行政事件訴訟法四条に言う「公法上の法律関係に関する訴えその他の公法上の権利関係に関する訴訟」であるとはいえない。したがって、本件要綱の違法確認を求める訴えは、適法な公法上の当事者訴訟であるとはいえないものである。 ウ また、本件要綱は、大田区支援費支給規則五条に基づいて定められたものであるが、同条の前提となる旧身体障害者福祉法施行規則九条の二及び九条の三は、障害者自立支援法施行規則附則一三条により平成一八年四月一日をもって廃止されているのであるから、本件要綱が違法であることの確認を求める訴えは、過去の事実又は法律関係の確認を求めるものというべきであるし、この確認を求めることが現在の法律上の紛争の直接かつ抜本的な解決のために最も適切かつ必要な場合であると認めることはできないから、これを適法な確認の訴えと認める余地はない。 エ したがって、いずれにしても、本件要綱が違法であることの確認を求める訴えは、不適法なものというほかない。 (4) 争点(4)(抗告訴訟たる義務付けの訴えとしての金員の支払を求める訴えの適法性)について ア 原告は、金員の支払が「処分」に該当するとして、処分行政庁に対する金員の支払の義務付けを求めている。 イ ところで、「義務付けの訴え」とは、行政庁がその処分又は裁決をすべきことを命ずることを求める訴訟をいい(行政事件訴訟法三条六項)、ここにいう「処分」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為をいい(同条二項)、公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいうものと解するのが相当である(最高裁昭和三七年(オ)第二九六号同三九年一〇月二九日第一小法廷判決・民集第一八巻八号一八〇九頁参照)。 ウ そして、金員の支払という行為自体は、直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定することが法律上認められているものということはできないから、これが処分に該当しないことは明らかである。 エ よって、抗告訴訟たる義務付けの訴えとして金員の支払を求める原告の訴えは、不適法である。 (5) 争点(5)(国家賠償法上の違法の有無)について ア 原告は、被告の公務員が身体介護を伴う移動介護に係る支給量を三二時間あるいは四二時間を超えて認めなかったことが国家賠償法上違法である旨主張する。 イ 国家賠償法一条一項は、国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体がこれを賠償する責任がある旨規定しているところ、同項にいう「違法」とは、公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務違背をいうものと解されている(最高裁昭和五三年(オ)第一二四〇号同六〇年一一月二一日第一小法廷判決・民集三九巻七号一五一二頁参照)ところ、居宅生活支援費の支給決定のために被告の公務員がした移動介護に係る支給量に関する認定の際、同公務員に職務上尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と誤認したと認め得るような事情がある場合には、当該居宅生活支援費の支給決定は国家賠償法上違法であるということができる。 ウ しかし、本件全証拠を精査しても、本件各処分当時、原告に係る事案以外に本件要綱六条を適用して身体介護を伴う移動介護に係る支給量の適否が争われた事案があったことをうかがうことはできないこと、前記認定事実のとおり、本件処分1ないし本件処分4をするための勘案事項の調査において、Bらが原告に対して勘案事項の調査に応ずるよう働きかけたにもかかわらず、原告はこれに応じなかったこと、本件処分5をするための勘案事項の調査において、Bらが資料の提出があれば本件要綱六条(3)を適用し三二時間を超える支給量の算定を検討する用意がある旨の話をしたにもかかわらず、原告は当該資料の提出を拒否したことなどを勘案すると、被告の公務員が移動介護に係る支給量に関する認定の際に原告に対して負担する職務上尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と誤認したと認め得るような事情があったとまでいうことはできない。 エ この点につき、原告は、本件各処分が行われた当時、既に平成一四年一〇月八日に大田区福祉オンブズマンであるAがした勧告が存在することを根拠に、被告の公務員の行為が国家賠償法上違法である旨主張する。 しかし、上記勧告は、本件要綱六条を適用して身体介護を伴う移動介護に係る支給量の適否が争われた事案ではなく、本件とは事案を異にするのであるから、上記勧告が存在することをもって、直ちに被告の公務員の行為が国家賠償法上違法であるということはできない。 オ したがって、本件について、被告の公務員の行為に国家賠償法上の違法があるということはできない。 三 なお、付言するに、前述のとおり、旧身体障害者福祉法の居宅生活支援費に係る規定は、障害者自立支援法附則三四条により平成一八年四月一日をもって廃止され、同日以降は、身体障害者は、同法に基づき介護給付費等の支給を受けることとなった。このような法律の改廃の結果、旧身体障害者福祉法に係る本件要綱六条に基づいてされた本件各処分の取消しを求める訴えが不適法となったことは前記のとおりである。しかしながら、原告に対してされた本件各処分が違法であったことは前記のとおりであるから、今後、原告について、障害者自立支援法等に基づく処分をするに当たっては、処分行政庁において、同法の趣旨及び目的並びに前記の判断の内容を踏まえ、同法の運用を適切に行うことが期待されるところである。 第四 結論  よって、本件訴えのうち、本件各処分のうち棄却した部分の各取消し、居宅生活支援費のうち身体介護を伴う移動介護に係る支給量を月一二四時間とする旨の処分の義務付け、本件要綱六条(2)及び(3)が違法であることの確認並びに処分行政庁に対し原告に居宅生活支援費の支払の義務付けを求める部分は、いずれも不適法であるからこれらをいずれも却下することとし、原告のその余の請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民訴法六一条を適用して、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第三八部 裁判長裁判官 杉原 則彦 裁判官 鈴木 正紀 裁判官 松下 貴彦 別紙1 (1) 旧身体障害者福祉法(なお、居宅生活支援費に係る規定は、平成一二年法律第一一一号により定められたものであるところ、平成一五年四月一日から施行された(改正附則一条二号)。) ア 一条  この法律は、身体障害者の自立と社会経済活動への参加を促進するため、身体障害者を援助し、及び必要に応じて保護し、もつて身体障害者の福祉の増進を図ることを目的とする。 イ 二条一項  すべて身体障害者は、自ら進んでその障害を克服し、その有する能力を活用することにより、社会経済活動に参加することができるように努めなければならない。 ウ 二条二項  すべて身体障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会を与えられるものとする。 エ 三条一項 国及び地方公共団体は、前条に規定する理念が実現されるように配慮して、身体障害者の自立と社会経済活動への参加を促進するための援助と必要な保護(以下「更生援護」という。)を総合的に実施するように努めなければならない。 オ 四条 この法律において、「身体障害者」とは、別表に掲げる身体上の障害がある十八歳以上の者であつて、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたものをいう。 カ 四条の二第一項  この法律において、「身体障害者居宅支援」とは、身体障害者居宅介護、身体障害者デイサービス及び身体障害者短期入所をいう。 キ 四条の二第二項  この法律において、「身体障害者居宅介護」とは、身体障害者につき、居宅において行われる入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活を営むのに必要な便宜であつて厚生労働省令で定めるものを供与することをいう。 ク 一七条の四第一項  市町村は、次条第五項に規定する居宅支給決定身体障害者が、同条第三項の規定により定められた同項第一号の期間(以下「居宅支給決定期間」という。)内において、都道府県知事が指定する者(以下「指定居宅支援事業者」という。)に身体障害者居宅支援の利用の申込みを行い、当該指定居宅支援事業者から当該指定に係る身体障害者居宅支援(以下「指定居宅支援」という。)を受けたときは、当該居宅支給決定身体障害者に対し、当該指定居宅支援(同項の規定により定められた同項第二号に規定する量の範囲内のものに限る。以下この条及び次条において同じ。)に要した費用(身体障害者デイサービスに要した費用における日常生活又は創作的活動に要する費用のうち厚生労働省令で定める費用及び身体障害者短期入所に要した費用における日常生活に要する費用のうち厚生労働省令で定める費用(以下「特定費用」という。)を除く。)について、居宅生活支援費を支給する。 ケ 一七条の四第二項  居宅生活支援費の額は、第一号に掲げる額から第二号に掲げる額を控除して得た額とする。 一 身体障害者居宅支援の種類ごとに指定居宅支援に通常要する費用(特定費用を除く。)につき、厚生労働大臣が定める基準を下回らない範囲内において市町村長が定める基準により算定した額(その額が現に当該指定居宅支援に要した費用(特定費用を除く。)の額を超えるときは、当該現に指定居宅支援に要した費用の額) 二 身体障害者又はその扶養義務者(民法(明治二九年法律第八九号)に定める扶養義務者をいう。以下同じ。)の負担能力に応じ、厚生労働大臣が定める基準を超えない範囲内において市町村長が定める基準により算定した額 コ 一七条の五第一項  身体障害者は、前条第一項の規定により居宅生活支援費の支給を受けようとするときは、身体障害者居宅支援の種類ごとに、厚生労働省令の定めるところにより、市町村に申請しなければならない。 サ 一七条の五第二項  市町村は、前項の申請が行われたときは、当該申請を行つた身体障害者の障害の種類及び程度、当該身体障害者の介護を行う者の状況、当該身体障害者の居宅生活支援費の受給の状況その他の厚生労働省令で定める事項を勘案して、居宅生活支援費の支給の要否を決定するものとする。 シ 一七条の五第三項  前項の規定による支給の決定(以下「居宅支給決定」という。)を行う場合には、次に掲げる事項を定めなければならない。 一 居宅生活支援費を支給する期間 二 身体障害者居宅支援の種類ごとに月を単位として厚生労働省令で定める期間において居宅生活支援費(次条第一項に規定する特例居宅生活支援費を含む。)を支給する指定居宅支援(同項に規定する基準該当居宅支援を含む。)の量(次条第一項及び第一七条の七において「支給量」という。) ス 一七条の五第四項  前項第一号の期間は、身体障害者居宅支援の種類ごとに厚生労働省令で定める期間を超えることができないものとする。 セ 一七条の五第八項  居宅支給決定身体障害者が指定居宅支援事業者から指定居宅支援を受けたとき(当該居宅支給決定身体障害者が当該指定居宅支援事業者に居宅受給者証を提示したときに限る。)は、市町村は、当該居宅支給決定身体障害者が当該指定居宅支援事業者に支払うべき当該指定居宅支援に要した費用(特定費用を除く。)について、居宅生活支援費として当該居宅支給決定身体障害者に支給すべき額の限度において、当該居宅支給決定身体障害者に代わり、当該指定居宅支援事業者に支払うことができる。 ソ 一七条の五第九項  前項の規定による支払があつたときは、居宅支給決定身体障害者に対し居宅生活支援費の支給があつたものとみなす。 タ 一七条の七第一項  居宅支給決定身体障害者は、支給量を変更する必要があると認めるときは、厚生労働省令の定めるところにより、市町村に対し、当該支給量の変更の申請をすることができる。 チ 一七条の七第二項  市町村は、前項の申請又は職権により、第一七条の五第二項の厚生労働省令で定める事項を勘案し、居宅支給決定身体障害者につき、必要があると認めるときは、支給量の変更の決定をすることができる。この場合において、市町村は、当該決定に係る居宅支給決定身体障害者に対し居宅受給者証の提出を求めるものとする。 ツ 別表 一から三まで(略) 四 次に掲げる肢体不自由 一 一上肢、一下肢又は体幹の機能の著しい障害で、永続するもの(以下略) (2) 平成一八年厚生労働省令第一九号による改正前の身体障害者福祉法施行規則(昭和二五年厚生省令第一五号。以下「旧身体障害者福祉法施行規則」という。なお、居宅生活支援費に係る規定は、平成一四年厚生労働省令第八三号により定められたものであるところ、平成一五年四月一日から施行された(改正附則一条)。) ア 一条  身体障害者福祉法(昭和二四年法律第二八三号。以下「法」という。)第四条の二第二項に規定する厚生労働省令で定める便宜は、入浴、排せつ及び食事等の介護、調理、洗濯及び掃除等の家事、生活等に関する相談及び助言並びに外出時における移動の介護その他の生活全般にわたる援助とする。 イ 九条の二第一項  法第一七条の五第一項の規定により居宅生活支援費の支給の申請をしようとする身体障害者は、次に掲げる事項を記載した申請書を、市町村に提出しなければならない。 一 氏名、性別、居住地及び生年月日 二 居宅生活支援費の受給の状況 三 施設訓練等支援費の受給の状況 四 現に介護保険法(平成九年法律第一二三号)の規定による保険給付に係る居宅サービス(同法第七条第五項に規定する居宅サービスをいい、同条第六項に規定する訪問介護、同条第一一項に規定する通所介護及び同条第一三項に規定する短期入所生活介護に限る。第九条の一二において同じ。)を利用している場合には、その利用の状況 五 当該申請に係る身体障害者居宅支援の具体的内容 六 扶養義務者の氏名、住所及び申請者との続柄 ウ 九条の二第二項  前項の申請書には、次に掲げる書類を添付しなければならない。 一 法第一七条の四第二項第二号に掲げる額(以下「居宅利用者負担額」という。)の算定のために必要な事項に関する書類 二 現に居宅支給決定(法第一七条の五第三項に規定する居宅支給決定をいう。以下同じ。)を受けている場合には、当該居宅受給者証(同条第五項に規定する居宅受給者証をいう。以下同じ。) エ 九条の三  法第一七条の五第二項に規定する厚生労働省令で定める事項は、次のとおりとする。 一 居宅生活支援費の支給の申請を行つた身体障害者の障害の種類及び程度その他の心身の状況 二 当該身体障害者の介護を行う者の状況 三 当該身体障害者の居宅生活支援費の受給の状況 四 当該身体障害者の施設訓練等支援費の受給の状況 五 当該身体障害者の身体障害者居宅支援及び身体障害者施設支援以外の保健医療サービス又は福祉サービス等の利用の状況 六 当該身体障害者の身体障害者居宅支援の利用に関する意向の具体的内容 七 当該身体障害者の置かれている環境 八 当該申請に係る身体障害者居宅支援の提供体制の整備の状況 オ 九条の五  法第一七条の五第三項第二号に規定する厚生労働省令で定める期間は、一月間とする。 カ 九条の六第一項  法第一七条の五第四項に規定する厚生労働省令で定める期間は、居宅支 給決定を行つた日から当該日が属する月の末日までの期間と一年間を合算して得た期間とする。 キ 九条の六第二項  居宅支給決定を行つた日が月の初日である場合にあつては、前項の規定にかかわらず、一年間を法第一七条の五第四項に規定する厚生労働省令で定める期間とする。 ク 九条の一二第一項  法第一七条の七第一項の規定により支給量(法第一七条の五第三項第二号に規定する支給量をいう。以下同じ。)の変更の申請をしようとする居宅支給決定身体障害者は、次に掲げる事項を記載した申請書を、市町村に提出しなければならない。 一 氏名、性別、居住地、生年月日及び居宅受給者証番号 二 居宅生活支援費の受給の状況 三 施設訓練等支援費の受給の状況 四 現に介護保険法の規定による保険給付に係る居宅サービスを利用している場合には、その利用の状況 五 当該申請に係る身体障害者居宅支援の具体的内容 六 心身の状況の変化その他の当該申請を行う原因となった事由 ケ 別表第五号 身体障害者障害程度等級表(一部分を抜粋したもの) 肢 体 不自由 級別 上 肢 1 両上肢の機能を全廃したもの 2 (略)  一級 (3) 厚生労働省告示第八六号による改正後の「身体障害者福祉法に基づく指定居宅支援等に要する費用の額の算定に関する基準」(平成一五年厚生労働省告示第二七号。以下「本件告示」という。なお、本件告示は、平成一五年四月一日から適用され、厚生労働省告示第八六号による改正後の本件告示は、同一七年四月一日から適用された。)(《証拠略》)  指定居宅支援(身体障害者福祉法(…(略)…)一七条の四第一項に規定する指定居宅支援をいう。以下同じ)又は基準該当居宅支援(同法第一七条の六第一項に規定する基準該当居宅支援をいう。以下同じ。)に要する費用の額は、別表により算定した額とする。 別表 身体障害者居宅生活支援費額算定表 通則 イ 指定居宅支援又は基準該当居宅支援に要する費用の額は、1、2(注2、注3及び注4を除く。)又は3(注2を除く。)により算定する額に別に厚生労働大臣が定める割合を乗じて得た額に、2(注2、注3及び注4に限る。)又は3(注2に限る。)により算定する額を加えた額とする。 ロ イの規定により指定居宅支援又は基準該当居宅支援に要する費用の額 を算定した場合において、その額に一〇円未満の端数があるときは、その端数金額は切り捨てて計算するものとする。 1 身体障害者居宅介護支援費 イからハまで(略) ニ 移動介護が中心である場合 (1) 身体介護を伴う場合 (一) 所要時間が三〇分未満の場合        二三一〇円 (二) 所要時間が三〇分以上一時間未満の場合   四〇二〇円 (三) 所要時間一時間以上の場合 五八四〇円に所要時間一時間から計算して所要時間三〇分を増すごとに八三〇円を加算した額 (2) 身体介護を伴わない場合 …(略)… ホ 日常生活支援が中心である場合 (1) 所要時間一時間以上一時間三〇分未満の場合   二四一〇円 (2) 所要時間一時間三〇分以上の場合 三三一〇円に所要時間一時間三〇分から計算して所要時間三〇分を増すごとに九〇〇円を加算した額 注1から注4まで(略) 注5 ニについては、別に厚生労働大臣が定める者が、屋外での移動に著しい制限のある視覚障害者又は全身性障害者(肢体不自由の程度が身体障害者福祉法施行規則(…(略)…)別表第五号の一級に該当する者であって両上肢及び両下肢の機能の障害を有するもの又はこれに準ずる者をいう。注6において同じ。)に対して、移動介護(社会生活上必要不可欠な外出及び余暇活動等の社会参加のための外出(通勤、営業活動等の経済活動に係る外出、通年かつ長期にわたる外出及び社会通念上適当でない外出を除き、原則として一日の範囲内で用務を終えるものに限る。)の際の移動の介護をいう。)が中心である指定居宅介護等を行った場合に所定額を算定する。 注6 ホについては、別に厚生労働大臣が定める者が、日常生活全般に常時の支援を要する全身性障害者に対して、日常生活支援(身体介護、家事援助、見守り等の支援をいう。)が中心である指定居宅介護等を行った場合に所定額を算定する。 (以下略) (4) 障害者自立支援法(平成一七年法律第一二三号) ア 一九条一項  介護給付費、特例介護給付費、訓練等給付費又は特例訓練等給付費(以下「介護給付費等」という。)の支給を受けようとする障害者又は障害児の保護者は、市町村の介護給付費等を支給する旨の決定(以下「支給決定」という。)を受けなければならない。 イ 一九条二項 支給決定は、障害者又は障害児の保護者の居住地の市町村が行うものとする。ただし、障害者又は障害児の保護者が居住地を有しないとき、又は明らかでないときは、その障害者又は障害児の保護者の現在地の市町村が行うものとする。 ウ 二〇条一項  支給決定を受けようとする障害者又は障害児の保護者は、厚生労働省令で定めるところにより、市町村に申請をしなければならない。 エ 二〇条二項  市町村は、前項の申請があったときは、次条第一項及び第二二条第一項の規定により障害程度区分の認定及び同項に規定する支給要否決定を行うため、厚生労働省令で定めるところにより、当該職員をして、当該申請に係る障害者等又は障害児の保護者に面接をさせ、その心身の状況、その置かれている環境その他厚生労働省令で定める事項について調査をさせるものとする。この場合において、市町村は、当該調査を第三二条第一項に規定する指定相談支援事業者その他の厚生労働省令で定める者(以下この条において「指定相談支援事業者等」という。)に委託することができる。 オ 二一条一項  市町村は、前条第一項の申請があったときは、政令で定めるところにより、市町村審査会が行う当該申請に係る障害者等の障害程度区分に関する審査及び判定の結果に基づき、障害程度区分の認定を行うものとする。 カ 二二条一項  市町村は、第二〇条第一項の申請に係る障害者等の障害程度区分、当該障害者等の介護を行う者の状況、当該申請に係る障害者等又は障害児の保護者の障害福祉サービスの利用に関する意向その他の厚生労働省令で定める事項を勘案して介護給付費等の支給の要否の決定(以下この条及び第二七条において「支給要否決定」という。)を行うものとする。 キ 二二条四項  市町村は、支給決定を行う場合には、障害福祉サービスの種類ごとに月を単位として厚生労働省令で定める期間において介護給付費等を支給する障害福祉サービスの量(以下「支給量」という。)を定めなければならない。 ク 二三条  支給決定は、厚生労働省令で定める期間(以下「支給決定の有効期間」という。)内に限り、その効力を有する。 ケ 附則一条  この法律は、平成一八年四月一日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。 一から三まで(略) コ 附則五条一項  施行日において現に…(略)…附則第三四条の規定による改正前の身体障害者福祉法第一七条の五第二項の規定により居宅生活支援費の支給の決定を受けている障害者…(略)…については、施行日に、第一九条第一項の規定による支給決定を受けたものとみなす。 サ 附則三四条 身体障害者福祉法の一部を次のように改正する …(略)… 第一七条の四から第一七条の九までを次のように改める。 第一七条の四から第一七条の九まで 削除 (以下略) シ 附則三六条一項  施行日前に行われた附則第三四条の規定による改正前の身体障害者福祉法(以下この条から附則第三八条までにおいて「旧法」という。)第一七条の四第一項に規定する指定居宅支援に係る同項の規定による居宅生活支援費の支給については、なお従前の例による。 (5) 障害者自立支援法施行令(平成一八年政令第一〇号) ア 附則一条  この政令は、平成一八年四月一日から施行する。ただし、附則第二〇条及び第二一条の規定は、公布の日から施行する。 イ 附則五条六項  施行日において現に法附則第三四条の規定による改正前の身体障害者福祉法(以下「旧身体障害者福祉法」という。)第四条の二第二項に規定する身体障害者居宅介護(外出介護に該当するものを除く。)に係る居宅生活支援費の支給の決定を受けている障害者については、施行日に、居宅介護に係る介護給付費の支給決定を受けたものとみなす。 ウ 附則五条七項  施行日において現に旧身体障害者福祉法第四条の二第二項に規定する身体障害者居宅介護(外出介護に該当するものに限る。)に係る居宅生活支援費の支給の決定を受けている障害者については、施行日に、外出介護に係る介護給付費の支給決定を受けたものとみなす。 (6) 障害者自立支援法施行規則(平成一八年厚生労働省令第一九号) ア 七条一項  法第二〇条第一項の規定に基づき支給決定(法第一九条第一項に規定する支給決定をいう。以下同じ。)の申請をしようとする障害者又は障害児の保護者は、次の各号に掲げる事項を記載した申請書を、市町村(特別区を含む。以下同じ。)に提出しなければならない。 一から九まで(略) イ 七条二項  前項の申請書には、次の各号に掲げる書類を添付しなければならない。ただし、市町村は、当該書類により証明すべき事実を公簿等によって確認することができるときは、当該書類を省略させることができる。 一から三まで(略) ウ 一三条  法第二二条第四項に規定する厚生労働省令で定める期間は、一月間とする。 エ 一五条  法第二三条に規定する厚生労働省令で定める期間は、支給決定を行った日から平成一八年九月三〇日までの期間とする。 オ 附則一条  この省令は、平成一八年四月一日から施行する。 カ 附則一三条  身体障害者福祉法施行規則(昭和二五年厚生省令第一五号)の一部を次のように改正する。 …(略)… 第九条から第九条の一四までを次のように改める。 第九条から第九条の一四まで削除 (以下略) 以上 別紙2 (原告の主張)  平成一八年四月一日から障害者自立支援法が施行され、旧身体障害者福祉法の居宅生活支援費支給制度の規定は削除された。  しかし、過去の時点の誤った処分の是正が問題となっている以上、行政の違法をただし、市民の権利を救済するという改正行政事件訴訟法の理念からすれば、訴えの利益は認められるべきである。  また、義務付けの訴えが処分の取消訴訟と併合して提起されている場合、取消訴訟の違法判断の基準時は当該処分の時点であるから、義務付けの訴えの違法判断の基準時も当該処分の時点と解すべきである。 以上 別紙3 (被告の主張) ア 旧身体障害者福祉法は、居宅生活支援費の支給関係について、支援費制度の実施主体である市町村が、身体障害者からの支給申請を前提として、当該身体障害者に係る旧身体障害者福祉法一七条の五第二項及び旧身体障害者福祉法施行規則九条の三所定の事項(以下「勘案事項」という。)を勘案した上で、居宅生活支援費の支給の要否並びにその支給に係る指定居宅支援の量及び期間を決定するという方法により、公費をもって当該身体障害者に対する助成を行うものとしている。  しかし、旧身体障害者福祉法は、市町村が支給量を定めるに当たって、勘案事項を勘案することのほか、何ら具体的な基準を定めていない。このことから、旧身体障害者福祉法は、市町村が身体障害者に対する支給量を定めるについては、当該身体障害者の勘案事項に係る個別具体的な状況を基礎とし、公費による支援が当該身体障害者の介護需要を満たす程度に相当ないし必要であるか否かといった観点からする当該市町村の長の合理的な裁量にゆだねているものと解すべきである。  そうすると、申請に係る居宅生活支援費の支給決定が違法となるのは、当該身体障害者の勘案事項に係る個別具体的な状況を無視して、当該身体障害者の介護需要を満たすに足りないほど、著しく少ない支給量を定めた場合のように、市町村長に与えられた上記裁量権の行使に逸脱又は濫用があった場合に限られるというべきである。 イ 処分行政庁は、本件各処分について、以下のとおり勘案事項調査等により把握した原告の状況を踏まえて、公費をもって支援することが相当ないし必要な居宅介護の支給量を定め、居宅生活支援費の支給を決定したのであるから、何ら裁量権の逸脱又は濫用はなく、本件各処分はいずれも適法である。 (ア)a 本件処分1を行うに当たって、処分行政庁が勘案事項の調査により把握した原告の状況は、勘案事項整理票(《証拠略》)記載のとおりである。  すなわち、原告は、脳性麻ひによる両上肢機能障害、移動機能障害(一種一級)を有する全身性障害者であるほか、言語機能障害及びえん下機能障害を有しており(なお、腎う腎炎の持病あり。)、日常生活全般にわたって支援を要する単身生活者である。また、家族による介護等の援助は全く望めず、生活保護法による生活扶助及び医療扶助を受給している。従前の支援費受給状況は、家事援助、身体介護の日常生活支援として一か月当たり三七二時間、移動介護(身体介護有)として一か月当たり一二四時間の支給量に係る居宅生活支援費を受給している。原告の意向は、二四時間の全日介護を希望しているものの、少なくとも一か月当たり一二四時間の移動介護に係る支給量を確保してほしいとのことである。 b 処分行政庁は、上記勘案事項に係る原告の状況及びその他の生活状況等を踏まえ、以下のとおり、必要な支給量を認定した。 (a) 処分行政庁は、原告が一日の生活時間のうち一〇時間を睡眠時間に充てており、自ら寝返りを打つことが不可能ではないことから、夜間については、就寝中の時間帯において常時身体介護や見守りを行う必要はないが、腎う腎炎の持病があることから、排尿、水分補給の身体介護及びその前後の見守りに充てるため一日二時間相当の支援を必要と認めた上、睡眠時間を除く生活時間帯については、原告が日常生活を支障なく営むために必要な入浴、排せつ、食事、衣服の着脱、身体の清拭の介助等の身体介護を中心とし、併せて調理、洗濯、掃除及び買物の家事援助の支援の必要性を認め、個々の介助又は援助の一回に要する単位時間数を算定し、それに一週間の必要回数を乗じた結果、身体介護に要する時間を一か月当たり三四四時間、家事援助に要する時間を一か月当たり七八時間三〇分、見守りに要する時間を一か月当たり四一時間二〇分と算定した。 (b) 原告は、平成一六年三月二九日に実施した勘案事項の調査において、移動介護に係る支給量を算定するために必要な外出の具体的な状況等に関する聞き取りには応じなかったため、処分行政庁は、移動介護について、平成一五年支援費支給決定後五回にわたって勘案事項の調査ができた日常生活支援の場合と異なり、平成一五年支援費支給決定の勘案事項の調査時から一年以上経過した上記勘案事項の調査時の原告の外出状況について、本件要綱六条(1)及び(3)に係る支給量を算定する上で必要な具体的な内容を的確に把握することができなかった。  このため、処分行政庁は、従前の原告の外出のほとんどが余暇活動等の社会参加のための外出に当たるものであったこと及び原告が従前どおりの外出の意欲又は意向を示していることから、原告が勘案事項の調査に応じ、外出状況について支給量を算定するために必要な具体的な内容を的確に把握することができるまでの当分の間、本件要綱六条(2)アで定められた三二時間を原告の移動介護に係る支給量として認定した。 c 以上のとおり、夜間の見守りを含む身体介護が一か月当たり約三八六時間、家事援助が一か月当たり約七九時間、合計一か月当たり四六五時間の日常生活支援に係る支給量は、一日当たりに換算すれば一五時間と、原告の一日の生活時間のうちで介護等の支援を必要とするほとんどの時間を補っており、また、原告の移動介護に係る支給量については、本件要綱六条(1)及び(3)に係る支給量を算定することができなかった本件処分1当時の事情の下では、その支給量の算定に当たって原告の移動介護に係る支給量の対象を余暇活動等の社会参加のための外出に限定せざるを得なかったのであり、しかも、その支給量を一か月当たり三二時間としたことについては、後述のとおり、外出を伴うような余暇活動等の社会参加に関する社会一般の標準的な時間数として相当である。 d したがって、本件処分1は適法である。 (イ) 処分行政庁は、本件処分2、本件処分3及び本件処分4をするに当たって、原告の支援費支給申請の意思は確認できたものの、原告が勘案事項の調査に応じなかったため、本件処分1の支給量を維持することとして、本件処分1の内容と同様の本件処分2、本件処分3及び本件処分4をしたのであるから、これらの処分に裁量権の逸脱又は濫用はなく、いずれも適法である。 (ウ)a 被告は、平成一七年六月二九日、原告からの支給申請書の提出を受けて、勘案事項の調査を実施したところ、通院状況及びその他の福祉サービスの利用状況に若干の変化が見られたものの、その余の部分は本件処分1の当時の状況と同様であった。 b また、原告は、それまで聞き取りを行うことができなかった具体的な外出状況について、一か月の間に、銀行に四時間、区役所に四時間、散髪に二時間、共生共走マラソンに四八時間、障害者雇用相談に四〇時間、介護保障を求める運動に四五時間、学校等の依頼に基づく協力に六時間、東京交通行動実行委員会に六時間、議会の傍聴等に一八時間、友人との交流等に一二時間、合計一八五時間の外出があるとし、ただし、日程の重複や身体状況の良否により、外出が不要ないし不可能な場合があるので、平均すれば一か月当たり一二四時間の支援を必要とする旨の意向を示した。 c しかし、被告は、従前から、本件要綱の内容等を説明する際に、原告に対し、「余暇活動等の社会参加のための外出」に該当するものについて一か月当たり三二時間を超える場合は、その外出に「特段の事情」を認めるに足りる客観的な資料の提出が必要である旨説明してきたが、原告は、本件要綱の適用を前提とした対応はできないとして、これらの資料の提出をしなかった。 d そこで、処分行政庁は、上記勘案事項の調査の結果を踏まえて、外出目的が金融機関、区役所等の公共機関への諸手続や散髪のためのものについては、社会通念上当該外出を行わないことにより、日常生活において著しい不都合を生じるものであるから、本件要綱六条(1)の「社会生活上必要不可欠な外出」に当たると認め、これらの外出に係る支給量を一か月当たり一〇時間とし、その余の外出については、すべて本件要綱六条(2)の「余暇活動等の社会参加のための外出」に当たると判断した。 e ところで、「余暇活動等の社会参加のための外出」については、一か月三二時間を超える外出に支援費を支給する場合には、本件要綱六条(3)所定の「特段の事情」が認められなければならないが、この規定は、一か月三二時間を超える「余暇活動等の社会参加のための外出」に支援費を支給する場合には、社会一般の標準的な時間数を超える外出に公費をもって支援することになるのであるから、社会一般の標準的な時間数を超える部分の外出には公費をもって支援するだけの必要性及び相当性が認められなければならず、このような必要性及び相当性が認められない外出にまで公費をもって支援することは適当ではないとの趣旨から設けられたものである。 f そして、本件要綱六条(3)所定の「特段の事情」を認めて支援費の支給を判断するためには、一か月三二時間を超える個々の外出ごとに、上記必要性及び相当性の存否の判断及び支給量の算定が可能な客観的資料が必要不可欠であるところ、原告は、本件要綱の規定を受け入れず、これらの資料を提出しようとしないのであるから、被告は、本件要綱六条(3)の「特段の事情」の存否について判断することができなかったのである。  その結果、身体介護を伴う移動介護に係る支給量については、従前の支給量一か月当たり三二時間に、新たに認めた「社会生活上必要不可欠な外出」である一か月当たり一〇時間を加えて、一か月当たり四二時間とした。一方、日常生活支援に係る支給量については、当該移動介護により外出中であっても身体介護の支援を受けることから、従前の日常生活支援に係る支給量から一〇時間を控除して、一か月当たり四五五時間とした。 g 以上のことから、本件処分5は適法である。 ウ(ア) 本件要綱六条は、移動介護に関する支給量の算定の指標となる統一的な基準を定めることによって、適切な事務処理を図ることを目的として定められた規定である。 (イ) ところで、本件要綱2条は、「移動介護」を「社会生活上必要不可欠な外出」と「余暇活動等の社会参加のための外出」とに分けているが、後者については、前者を除くすべての外出を広く包含するものとしており、その性質上、目的、態様、頻度、要する時間等も個々人の趣味し好、考え方、置かれた状況、環境等により千差万別であるから、対象となる個々人のすべての需要に応じて支援費を支給しなければならないとした場合には、支給量を具体的に定めるに当たって、対象者各人のすべての外出をあらかじめ把握しなければならず、技術的に不可能であるばかりか、限りある福祉財源の公平あるいは適正な配分という観点からも相当ではない。 (ウ) そこで、処分行政庁は、適切な事務処理を図る観点から、「余暇活動等の社会参加のための外出」に係る支給量の算定の指標となる統一的な基準を定めることとした。すなわち、本件要綱は、目的、態様、頻度等が個々人において千差万別である「余暇活動等の社会参加のための外出」について、その指標となる基準を定める方法として、まず、日常生活のサイクルが通常一週間を単位としていることから、一週間の標準的な支給量を八時間と措定し、その上で、全身性障害者等については一か月当たりの標準的な支給量の上限を三二時間とし(本件要綱六条(2)ア)、特段の事情が認められる場合には、当該外出に要する相当な時間数を標準的な支給量の上限に加算することができるとしている(本件要綱六条(3))。  そして、「余暇活動等の社会参加のための外出」の支給量の算定の指標となる基準を定める方法として、一週間の標準的な支給量を八時間と措定したことは、総務省統計局調査部が五年ごとに実施している「社会生活基本調査」において、一五歳以上の「積極的自由時間活動」(「学習・研究」、「趣味・娯楽」、「スポーツ」、「ボランティア活動・社会参加活動」の合計時間)が平成一三年に一日当たり一時間一〇分となっていることに照らして相当であり、したがって、本件要綱六条(2)アが全身性障害者等について一か月当たりの標準的な支給量の上限を三二時聞としたことには、合理性があり、かつ、相当性があり、しかも、標準的な支給量の上限を超える外出が予測できる場合には、特段の事情さえ認められれば加算することを認めているのであるから、本件要綱六条(2)及び(3)は、何ら移動介護の支給量を定めるに当たって不合理な制限を加えているものではないから、適法である。 エ 旧身体障害者福祉法によれば、居宅生活支援費の支給については、身体障害者からの支給申請に基づき、これを受けた市町村が、当該身体障害者に係る支給期間が満了すれば、当該身体障害者は、引き続き居宅生活支援費の支給を受ける必要がある場合であっても、新たな支給申請を行い、改めて勘案事項の調査を受け、その結果を勘案した支給量等の決定を受けなければならない。したがって、その際、支給量を定めるにつき、新たな基準が適用される場合には、当該基準によって支給量を定めたとしても、当該基準が合理的である限り、不利益変更という問題は生じない。  そうすると、原告に対する平成一五年支援費支給決定が支給期間満了によりその効力を失った後に、本件要綱所定の支給量に関する基準を適用したからといって、本件要綱所定の基準が合理性を有する以上、本件各処分が不利益変更の原則に反するということはない。 オ 原告は、本件各処分が行政手続法に違反する旨主張するが、同法一三条一項及び三〇条の適用対象は、いずれも「不利益処分」であるところ、同法二条四号ロは「申請により求められた許認可等を拒否する処分その他申請に基づく当該申請をした者を名あて人としてされる処分」を「不利益処分」から除外している。  本件各処分は、いずれも原告からの支援費支給申請を受け、原告を名あて人としてされたものであるから、同法一三条一項及び三〇条にいう「不利益処分」には該当しない。したがって、弁明の機会を付与せず、同条各号所定の事項を書面により通知しなかったことに違法はない。 カ(ア) 平成一五年一二月から同一六年三月までの間に行われた合計五回の勘案事項の調査のうち、同一五年一二月二日、同一六年一月九日、同月一三日及び同月二七日に実施した四回の勘案事項の調査は、同一五年一二月二日付けの日常生活支援に係る支給量変更申請に基づいて行われたものである。  すなわち、上記一連の勘案事項の調査は、原告の上記変更申請に係る日常生活支援の支給量を定めるために必要な判断資料を得ることを目的として行われたものであって、移動介護に係る支給量を定めるために行われたものではない。上記一連の勘案事項の調査の際、被告の担当職員が原告の外出状況を聞き取ったのは確かであるが、それは、日常生活支援に係る具体的な支給量を新たに算定し直すためには、原告の日常生活動作が低下している身体状況の下にあって、平成一五年支援費支給決定に係る移動介護の支給量をそのまま日常生活支援の支給量として維持する必要があるか否か、どのような種類の身体介護がどの程度必要か等について検討する必要があり、そのためには、日常生活動作の低下が原告の従前の外出状況にどの程度の影響を及ぼしているのか等について概括的にでも確認しておく必要があったことから、これを聞き取ったにすぎない。 (イ) また、平成一六年三月二日の勘案事項の調査は、日常生活動作の低下による夜間介護の必要性が高くなったことを理由として、日常生活支援の支給量のみを一日当たり一六時間に増加する旨の原告からの同年二月二七日の支給量変更申請に基づいて行われたものである。  すなわち、被告の担当職員は、同一五年一二月から同一六年一月にかけて聞き取った原告の日常生活動作の低下に伴う身体状況を踏まえ、原告の上記変更申請の趣旨に沿って、専ら夜間就寝時間帯における身体介護の要否及び程度について判断資料を得る目的で、上記勘案事項調査を行ったのであり、その際上記支給量変更申請の対象とはなっていない外出状況についても聞き取ってはいるが、それは、原告の起床活動時の生活状況全体を把握するために、その一部である従前の外出状況についても確認的にその概要を聞き取ったものであり、したがって、その聴取内容は、本件要綱が制定され適用される以前に行われた平成一五年支援費支給決定の際の聴取内容を超えるものではない。 (ウ) ところで、移動介護に係る支給量を定めるために行われる勘案事項の調査は、支給期間中の一か月当たりの必要量を具体的な時間数をもって定めるのに必要な判断資料を得る目的で行われるものであるから、その判断が可能な程度に、また、中でも本件要綱2条の「余暇活動等の社会参加のための外出」については、限りある福祉財源の公平かつ適正な配分という観点からすれば、一か月当たりの支給量が三二時間を超える場合には、当該外出が特に公費をもって支援することが相当であるか否かの判断が必要であることから、その判断が可能な程度に、あらかじめ想定される外出状況について個別具体的に聞きただすものであって、上記五回の各勘案事項の調査の際にされた外出状況の聞き取り調査とは、その聴取目的、聴取内容範囲及び程度において全く異なるものである。 (エ) したがって、上記五回の各勘案事項の調査は、それだけをもって本件処分1ないし本件処分4の際に行われるべき移動介護に係る勘案事項調査自体を不要にするものではなく、それに代替するものでもない。 (原告の主張) ア 原告は、障害者として積極的に社会参加することの重要性を自覚し、社会地域のノーマライゼーションのための市民活動を行うことを生活の中心としてきた。  原告は、「共生共走リレーマラソン」の東京事務局の一員を務めており、頻繁に打合せその他の仕事がある。また、原告は、東京南部労働組合副委員長、やってる会、福祉の街づくり条例を考える会、大田区街づくり、ジューシーの会、「イメージ」、阪神被災障害者を支援する東京南部の会など様々な活動を行ってきている。 イ 原告は、ベッドからの乗り降り、トイレへ行くこと、水分補給等を一人ですることができない。また、原告は、手足が不自由であることのほか、言語障害も有するため、常時介護人なくしては社会参加活動を行うことはできない。  原告が身体介護を伴う移動介護を要するものとしては、@共生共走マラソン事務局会議への週四回の出席、A銀行その他の公的機関への週三回程度の外出、Bその他の障害者活動や社会活動、C映画鑑賞や野球観戦等の娯楽及び趣味活動、D友人との週三回程度の交友、E原告主催の障害者の集会への週二回の出席などがある。 ウ(ア) 旧身体障害者福祉法一七条の五第二項は、「市町村は、前項の申請が有われたときは、当該申請を行つた身体障害者の障害の種類及び程度、当該身体障害者の介護を行う者の状況、当該身体障害者の居宅生活支援費の受給の状況その他の厚生労働省令で定める事項を勘案して、居宅生活支援費の支給の要否を決定するものとする。」と規定し、旧身体障害者福祉法施行規則九条の三は、「法第一七条の五第二項に規定する厚生労働省令で定める事項は、次のとおりとする。」と規定し、勘案すべき事項を定めている。 (イ) したがって、処分行政庁は、勘案事項を調査の上、個別のニーズに即して支援費支給量を決定しなければならないにもかかわらず、原告に移動介護に係る支給の必要量が減少したということを認定した勘案調査結果は存在しておらず、そのような勘案調査に基づくことなく、本件要綱六条(2)を移動介護に係る支給量の上限設定の根拠であるとして、これを機械的に適用して、一方的に原告に対して移動介護に係る支給量を四分の一に削減するという不利益処分をしたものであり、その違法は明らかである。 (ウ) このように支給量に上限を設けることは、東京都及び厚生労働省の見解にも反するものである。したがって、本件要綱の設定及び本件要綱に基づく処分が違法であることは明らかである。 エ 厚生労働省は、新規施策を導入したり制度を変更する場合には、利用者に対する従前のサービスの水準を維持しなければならないと繰り返し行政指導している。生活保護法五六条が「被保護者は、正当な理由がなければ、既に決定された保護を、不利益に変更されることがない。」と不利益変更禁止原則を規定しているところ、これは生活保護法に限ったことではなく、社会保障全般に通じる原則である。ここにいう「正当な理由」とは、予算の不足などではなく、法に定められた保護の変更、停止及び廃止の要件に該当する場合に限られるというべきである。  本件各処分は、この不利益変更禁止原則にも違反する違法な処分である。 オ 被告は、本件要綱における移動支援費の支給量の上限を設定したことを正当化する根拠として、移動介護を日常生活支援費に含めることができる からである旨主張し、「大田区居宅介護支援費(日常生活支援)の支給決定に関する要綱」(保福障発第二一六八号平成一六年四月一日付け大田区長決定。《証拠略》)の八条は「日常生活支援の支給対象者に対する医療機関等への通院以外の社会生活上必要不可欠な外出及び余暇活動等の社会参加のための外出を目的とする移動の支援については、日常生活支援又は移動介護により算定する。」と規定する。  しかし、本件告示によれば、「日常生活支援」とは、「日常生活全般に常時の支援を要する全身性障害者に対して、日常生活支援(身体介護、家事援助、見守り等の支援をいう。)が中心である指定居宅介護等を行った場合」と定義されているのであるから、この日常生活支援の定義を上記要綱において変更することは違法である。 カ 本件要綱六条(3)は、現体制に都合がいいと処分行政庁が認めた者だけに多額の給付金を支払うという特権を付与する制度といわざるを得ず、憲法一四条に違反する違憲、違法な制度である。 キ 障害者基本法三条一項は、「すべて障害者は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有する。」と規定し、同条二項は、「すべて障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が与えられる。」と規定し、同法四条は、「国及び地方公共団体は、障害者の権利の擁護及び障害者に対する差別の防止を図りつつ障害者の自立及び社会参加を支援すること等により、障害者の福祉を増進する責務を有する。」と規定し、同法八条一項は、「障害者の福祉に関する施策は、障害者の年齢及び障害の状態に応じて、かつ、有機的連携の下に総合的に、策定され、及び実施されなければならない。」と規定し、同条二項は、「障害者の福祉に関する施策を講ずるに当たつては、障害者の自主性が十分に尊重され、かつ、障害者が、可能な限り、地域において自立した日常生活を営むことができるよう配慮されなければならない。」と規定し、同法一二条三項は、「国及び地方公共団体は、障害者がその年齢及び障害の状態に応じ、医療、介護、生活支援その他自立のための適切な支援を受けられるよう必要な施策を講じなければならない。」と規定している。 本件各処分は、上記各条項に違反する違法なものである。 ク 一人暮らしをしている脳性麻ひの障害がある者が二四時間介護を被告に対して求めたところ、被告がサービス量の上限を理由にこれを拒否した事案につき、大田区福祉オンブズマンは、平成一四年一二月一八日、「サービス提供に際しては、サービス量に上限があるとして制限するのではなく、また一定のサービス量を一律に提供するのでもなく、相談者の生活状況等を具体的に把握し、問題解決に必要なサービスと必要量を決定されたい。」という勧告をしている。  本件各処分は、上記勧告に明らかに抵触するものであり、違法である。 ケ 処分行政庁は、本件各処分を正当化する理由として、財政上の制限を理由に支援費支給の支出には一定の制約がある旨主張する。  しかし、本件要綱によって支援費の支給が減少し大田区の財政支出抑制に効果を上げたということはないから、正当化する根拠となり得ない。 コ 障害者の移動介護時間を一か月三二時間としたのは、一般健常者の余暇時間が一週間に八時間であることを根拠としているが、障害者の社会参加のためには移動介護が必要であるところ、障害者の社会参加活動を一般健常者の余暇時間と同価値であるとしていることに、正当性及び合理性は認められない。 サ 被告が策定した「大田区地域保健福祉計画」には、「どんなに障害が重くても、障害者が経済的に自立し、必要なときにいつでも必要なサービスを利用できるよう取り組みを進めます。」、「日常生活を送る上で欠くことのできない、保健、医療サービス、生活支援サービスの質・量の拡充及び権利擁護事業への支援を行います。特に、障害者の在宅生活を支える上で重要な家事援助、身体介護、デイサービス、外出援助(ホームヘルパー、ガイドヘルパー、手話通訳)等、日常生活の基礎を支えるサービスの充実を図ります。」などの内容がうたわれている。  しかし、本件各処分は、上記計画に違反するものである。 シ 本件においては、処分行政庁には、平成一五年支援費支給決定及び平成一六年変更決定と同様に、最低でも一か月当たり一二四時間の移動介護支給量を保障すべき義務が課されていたというべきであるから、本件各処分につき処分行政庁の裁量を論じる余地はない。  仮に、移動介護支援費の支給に処分行政庁の裁量が認められるとしても、本件各処分は、その裁量権の範囲を逸脱した違法な処分である。 ス 旧身体障害者福祉法一八条の四は、「第一七条の二第一項第三号、第一八条又は第四九条の二の措置を解除する処分については、行政手続法第三章(第一二条及び第一四条を除く。)の規定は、適用しない。」と規定しているところ、この反対解釈からすると、支援費支給における不利益処分については行政手続法が適用されることとなる。したがって、処分行政庁は、本件各処分をするに当たっては、同法一三条一項二号所定の弁明の機会を付与すべきであったにもかかわらず、弁明の機会を付与しないまま本件処分をしたのであるから、本件処分は違法である。 以上 別紙4 (原告の主張) ア 本件要綱は、一律に支給量の上限を規定するものであるから、旧身体障害者福祉法の趣旨及び支援費制度の趣旨に照らして違法である。 また、本件要綱六条が適用されることにより、大田区民の支援費の支給量が削減されるのであるから、本件要綱は「立法」あるいは「法規」と化している。しかし、本件要綱は、立法権限が付与されていない助役が定めたものであるから、法治主義に反するものであり違法である。 イ 本件では、仮に個別の処分の違法が宣言されたとしても、本件要綱それ自体が撤廃されない限りは原告は将来にわたって不利益処分を受けるおそれのある不安定な地位に置かれることになるから、権利救済の目的を果たすことができない。 また、本件要綱の違法性については、大田区の他の障害者だけでなく、大田区以外の全国の地方自治体並びにその住民、障害者及び福祉関係者にとって重大な関心事項であるから、本件要綱それ自体の違法を確認することが必要不可欠である。 したがって、行政事件訴訟法四条所定の当事者訴訟として、本件要綱の違法確認を求める。 (被告の主張)  原告は、行政事件訴訟法四条後段所定の公法上の当事者訴訟として、本件要綱が違法であることの確認を求めている。  しかし、同条は、「公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟をいう」と規定しており、その対象は飽くまでも公法上の権利関係に関するものに限られる。  本件要綱は、大田区における居宅介護支援費のうち移動介護が中心である場合に係る支給決定について、行政の統一性及び公平性を確保するため、大田区助役がその取扱いの準則を定め、下級機関に対してその遵守を命じたものにすぎず、下級機関を法的に拘束するのみで、住民の権利義務に直接影響を及ぼすものではなく、それ自体は原被告間に何らの法律関係を生じさせるものではない。  したがって、本件要綱の違法確認を求めることは、「公法上の法律関係に関する確認の訴え」ということはできないから、本件要綱の違法確認を求める訴えは不適法である。 以上 別紙5 (原告の主張) ア 行政事件訴訟法が改正され、義務付けの訴えとして、裁判所に対し行政庁が具体的な金銭の給付をすべき旨を命ずることを求めることができることになったことは異論がない。  支援費支給決定の義務付けだけでは、被告が金銭の支払を拒むおそれがあることから、具体的金額を定めた金銭支給を命ずる給付判決が必要であり、原告には当該判決を求める訴えの利益がある。 イ 原告が抗告訴訟たる義務付けの訴えとしての金員の支払を求める訴えは、旧身体障害者福祉法一七条の四第一項に規定されている処分を求めるものであるから適法である。 (被告の主張) ア 原告が抗告訴訟たる義務付けの訴えであるとして金員の支払を求める訴えは、処分ではなく単に一定額の金銭の支払を求めるにすぎないから、行政事件訴訟法三条六項の類型に当てはまらない不適法な訴えである。 イ もっとも、原告が求めているのが一定額の金銭を給付する旨の支給決定であると解する余地もあるが、行政事件訴訟法の定める義務付けの訴えは、飽くまでも法律が定めているとおりの内容の処分を義務付け得るにすぎないのであり、同法三条六項本文所定の「処分」とは、法律に定められた内容の処分をいうことは明らかである。しかるに、旧身体障害者福祉法に基づき市区町村長が行う支援費支給決定は、支援費の支給期間及び支給量を定める内容の処分であり、具体的な金銭の給付を内容とする処分ではなく、同法上市区町村長に一定額の金銭を給付する旨の決定をすべき内容の処分を定めた規定は存しないから、不適法であることに変わりはない。 以上 別紙6 (原告の主張)  被告の公務員は、旧身体障害者福祉法に定められた要件に基づいて決定すべき支援費支給決定において、同法と勘案事実から導き出されるべきき束行為を逸脱して違法な行為を行い、また、オンブズマンの勧告を受けて是正措置の確約をしておきながらそれに反する行為をしているのであるから、「個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背したこと」、「職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく法の趣旨を逸脱したこと」は明らかであり、被告の公務員の上記行為は、国家賠償法上違法である。 以上 1